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飛ばされた敵は、もれなく体力を全損させて消え去った。
「キィッ?」
「キキィッ⁉︎」
突然の出来事で、小人側も動揺を隠せない。慌てて七星から離れ、周囲を見回している。そんな彼らを容赦なく、アウトレンジから狙い澄まされた弾丸が貫いていく。
「ギィッ⁉︎」
「ギャッ!」
圧倒的な攻撃力をまともに食らって、短い悲鳴を残しながら次々と消滅していく小人。ティンクルは彼らの吹き飛ばされていく方向と逆を見る。全身が痺れと痛みで動かないので、顔だけをどうにか動かして確認する。
数十メートル先、木陰に紛れて人影が1つ。
構えたライフルで1体、また1体と的確な狙いで駆逐している。銃口は消音器と一体型になっていて、銃声はほとんど聞こえない。
その戦い方は、まさしく一撃必殺のスナイパー。
しかし、ある1体が目敏くその存在に気がついた。徐々に敵の情報は集団の中で伝播して、狙いを定める狙撃手とは逆の方向に逃げ始める。
だが、それを易々と見逃してくれるはずがなかった。
ティンクルが目を離した隙に、スナイパーは驚異的な速さで小人の集団へと肉薄。いつの間にか狙撃用のライフルから武器を持ち替えていた。二刀流の、小型のサブマシンガン。
彼から集団までの距離は数メートル。そこから回り込んで、真横から。
掃射。
両の手から放たれる閃光。雨のような弾丸は容赦なく敵を穿ち、蜂の巣にした。もしかしたら敵の半分くらいは、何が起きたかわからないまま消えていったかもしれない。
結果を一言で言うなら、完全無欠の圧勝。少しの反撃も許さない電撃戦。あれだけ大勢いた小人は、跡形もなく消え去っていた。
そして、風のように現れた勝者は、ティンクルの前に。
短い白髪。
顔の下半分を覆い隠す機械的なマスク。
身体のフォルムを際立たせる、細身で近未来的なボディアーマー。
全身は影の色に近い漆黒で統一されており、その姿はまるで忍者。
いや、死神かもしれない。
目が合う。
顔を隠していたマスクを解除した。
目の色素は薄く、肌も白い。全身を覆うボディアーマーとモノトーンな対比。
日本人離れした色合いだが、全体の輪郭や顔のパーツには見覚えがあった。
『すまん、待たせたな』
唐突に繋がったボイスチャットで、呆然としていたティンクルの意識が引き戻された。
「お兄……ちゃん……?」




