1
神崎七星は、ヒーローに憧れていた。
きっかけは、1コ上の兄だった。
小さい頃、兄と一緒に見た特撮シリーズ。
人類の平和を脅かす怪人達を相手に、恐れることなく立ち向かう勇敢なヒーロー。
時には圧倒的な力を前にボロボロになりながらも、それでも世界の平和を守るために戦う不屈のヒーロー。
最後は仲間と力を合わせて、大逆転勝利を飾る最強のヒーロー。
DVDで録画した液晶画面越しに、その雄姿を何度も焼き付けた。
そして、公園に飛び出したら兄と一緒に日が暮れるまでヒーローごっこ。
「オレがヒーローレッドだ!」
「じゃあ、あたしはブルー!」
「ナナセは女の子だからピンクだろ?」
「やだ! ブルーがいい!」
兄がリーダーで自分はサブリーダー。そんな立ち位置が七星は好きだった。一緒に変身ベルトやヒーローの剣を手作りで再現して、2人で平和を守る小さな世界。本当は友達を誘って5人にしたかったけど、女の子の友達はみんなお人形やおままごとに夢中だった。兄の友達も仲間に入ったと思ったらすぐに抜けてしまった。
結局、七星達は2人で世界を守り続けた。毎日無邪気に追いかけていた、ヒーローと兄の背中。
それから、10年後。2026年。
兄は、念願のヒーローになった。
一方の七星は——魔法少女になっていた。