終章 エピローグ
終章 エピローグ
陽気に誘われてララクは鍛冶場から外に出る。鍛冶場ではエンアンが炉に火を入れていた。竜の村は冬の間、街から避難してきた民衆でごった返していた。晩秋にアッシュールを筆頭に化け物、アッシュールが魔物と言っていた女の怪物と戦った。竜の村で冬を迎え、春を待った。アッシュールも竜の村に滞在していたが雪解けと共にココとナンムを連れて東へ旅立って行った。
竜の村では街に住んでいた全員の住処と畑を用意できなかった。アッシュールと一緒に東へ旅だった者もいた。山で暮らすと思い立った者もいた。知り合いを捜しに北の街へ行く者もいた。竜の村の半数以上は旅立ちを余儀なくされ、春から夏にかけて旅立って行った。
アッシュールは東の地の調査も兼ねると言っていた。広範囲にルージャの血や肉が飛び散り、生態系が変わっている可能性があるという。事実、竜の村の廻りでも犬ほどの蜘蛛だとか、二ジュメはあろうかという蝙蝠が確認されている。アッシュールは魔物と言っていた。
竜の村の東側は広範囲で魔物の巣窟になっているとアッシュールは考えている。魔物の真ん中に、ルージャがいるはずだと。
ララクはアッシュールは強いから死ぬ事はないだろうと考えている。心配はもっと身近な、ジアンナのお腹にすることにした。まだお腹は小さいが、子供が授かったのだ。
ララクはアッシュールに、自分の子供を見せたいと思った。旅立ちは、この時代では今生の別れに等しい。生きて会えることも無いかも知れない。でも、ララクはアッシュールの無事と再会を祈らずにはいられなかった。
ルージャの血と肉片が竜の村の東側に広範囲に飛び散り、魔物や魔法使い、妖精が生まれた。人々は川の街から四方へ散り、人が広範囲に住み着くようになった。気の遠くなるような時間を掛けて極北にまで到達した者もいる。また海に繰り出し、島々に住み着いた者もいる。住み着いた先々で方言が生まれ、やがて異なる言の葉となった。人々は竜の村から麦を背負い、ララクとエンアンが打ったくろがねの刃物や農具を持ち出した。麦とくろがねが拡散したのだった。
魔物や妖精の誕生、麦とくろがねを持った人々の拡散の始まりにより竜の時代は幕を閉じ、魔物が跋扈し英雄が舞う古王国時代が幕を開けるのである。
古王国の英雄の話は、また今度にしよう。
アッシュールがルージャを探しに、旅に出かけます。
長い間、ありがとうごあいました。
アッシュールとルージャの物語はまだまだ続くのですが、
ひとまず終わりとなります。




