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第6章 神殿 その7 エルニカの過去2

 「これは血ですね。匂いがきついわ。血は水とくろがね、炭で出来ているのですね。それぞれの状態に戻りなさい」


 女神は血を眺め、手をかざすと血はみるみるうちに無くなり、濡れた煤と黒い砂になった。エルニカは驚いて新たに現れた黒い砂をみる。砂鉄だった。


 「女神様。愚かな私に、今何を行ったのか教えていただけないでしょうか」


 「血が臭うので、臭わないようにしただけです。観察したところ、血は水とくろがねと煤で出来ているようでした。元に戻れと命じただけです。死体も、水と煤とくろがね、あと白いもの、石灰で出来ていますね。臭います。元に戻りなさい」

 遺体も濡れた砂鉄と煤、石灰に別れた。


 「あなたは、不思議な力をお持ちの様ですね。記憶を検索してみます。なるほど、あなたは雨降と言うのですか。私の依り代の少女の記憶にありました。依り代に集魂の石を取込み、私が生まれたのですね。なるほど」

 エルニカは女神の言葉に聞き入る。女神は自分で情報を集め、結果を導き出している。竜の血の力も自由自在に使える様だった。


 「私は何者なのでしょう。魂が沢山入り込んでいます。入り込んでいるのでは無いのですね。依り代を魂で囲んでいるのですね。なるほど。先ほどの死体の処理で魂がひとり分無くなりました。私が何かすると魂が消費されます。なるほど。私は誰なのでしょう。依り代の少女ではありません。魂が二十一人分あります。全ての魂が考えています。それでは二十一通りの考えが生まれます。私はひとり分の考えしかありません」


 「二十一人でひとり分の働きなのでしょうか」

 「そのようです、エルニカ。少女の記憶だと、あなたの名前なのでしょう」


 「エルニカで結構です。先ほど、死体を分解していただきましたが、ご説明をいただけないでしょうか」

 「わかりましたわ。私は死体が臭うので分解したいと思いました。二十一人の記憶によると虫たちが湧き、腐って分解することがわかりましたが、時間が掛かりますし匂いは酷いです。観察を続け、二十一人分の魂を一斉に働かせると血という物質があるのでは無く、何種類かの物質が組み合わさって出来ているのだとひらめきました。私が命ずると血はばらばらに別れました」


 エルニカは話を聞き、ほくそ笑む。視た物の全てを知り、全てを行える。全知全能だ。あとは魂を増やしていけば、益々全知全能に近づくだろう。戦が起こる気配があるが、待つ事も無い。要は、この街の人間を殺せば良いのだ。


 「全知全能の女神よ、お見事です。お分かりでしょうが、御身は死者の魂を纏っております。魂が増えるほど、御身の知能は冴え渡り、力が増えて行くでしょう。雨と雷を落としていただけないでしょうか。まずは雷を落とし、家々を燃やしましょう」


 「雷はなるほど、天からの雷撃ですね。積乱雲を作り、中で帯電させるのですか。残念ながら私のもつ魂では行えません。魂が足りないです」


 「それでは、目の前の家々を燃やしましょう。出来ますか」

 「それなら良いでしょう。目の前の家をもやします」

 女神は窓を開けると、向かいの家を見つめた。家は突如業火に包まれた。魂が四人分入り込む。


 「隣の家も燃して下さい」

 エルニカの指示で二件、三件と業火を纏わせる。街が大騒ぎになっていく。

 魂がどんどん女神に吸い込まれる。


 「雨を降らせることは出来ますか。大雨が良いかと思います」

 女神は頷くと、街に雨を降らせた。業火に包まれた家々の火は消え、周囲の人達は安堵の息を漏らす。


 「このまま雨を降らして下さい」

 女神は小さく頷いた。


思ったより短くなってしまいました。

次話も連投いたします。

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