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第1章 旅立ち その5 決戦2

主人公 アッシュール

1ジュメ=約1.6m、人の身長の高さ

 アッシュールは一人で食い止めるのを止め、村にタルボを走らせた。

 村の入り口には槍を持った三名と、剣を持った四名がいた。アッシュールが中に入ると、門が閉じられる。

 アッシュールはタルボから降りた。


 「タンム! ララクさん、ウバルさん、槍衾(やりぶすま)!」

 四人は閉じられた門に向かって槍を構える。


 「エリドゥさん、ここは僕が食い止めます! 中に入られたら、仕留めてください!」

 アッシュールは剣を持つエリドゥ隊を後ろに構えさせた。彼らは剣であるため、トカゲの攻撃範囲に入ってしまう。トカゲの攻撃速度は速く、人間が反応出来る速度ではない。剣では戦えない。柄の長い槍が必要だ。


 門の扉を強く叩く音がする。トカゲが体当たりしていた。扉は軋みながら、徐々に開いていく。

 閂が折れ、扉が開いた。二体のトカゲが侵入してきた。


 「皆、斬りつけ!」

 アッシュールの号令で四人が同時に上から斬りつけた。頭を叩かれ、トカゲは歩みを止めた。間髪入れず、攻撃を続けなくてはならない。間が空くと、火を噴かれ、損害が雪だるま式に増えて行く。


 「皆、突き!」

 トカゲ二体に槍四本が突き刺さる。トカゲは体を激しく震わせると動かなくなった。最初に襲来したトカゲよりかなり小さいが、人間よりも遙かに大型である。最初に絶命したトカゲが邪魔になり、後ろのトカゲが前に出ることが出来ないようだった。


 「皆、火を吐かないうちに、次を倒す!」

 アッシュールは横たわるトカゲに上がる。三人も後に続く。トカゲは四体のようだ。


 「皆、構え、突き!」

 アッシュールは、トカゲの死体と後ろに挟まれて動けないトカゲの口めがけて突きを繰り入れた。他の三名も同時に突きを繰り出す。四人の突きで動かなくなる。


 「次、後ろの二体、同時! 構え、突き!」

 再び四人で突きを繰り入れる。アッシュールは口を貫き、致命傷を与えた。ララクとタンムは致命傷にならず、トカゲが痛みでもだえ始める。


 「もう一度、突き!」

 再び四人で突く。トカゲの口から大量の血が飛び出る。

 残り一体は後ずさり始めた。口を大きく開く。


 「皆、正面から待避! 火を噴くぞ! 左右から突き!」

 トカゲの口が明るくなり、橙色の炎を吹き上げた。門に直撃し、たちまち炎上し始める。

 アッシュールとウバルはトカゲの右側、ララクとタンムはトカゲの左側に動いていた。


 四人は左右から槍を突き刺した。炎が止まり、体をもだえ始める。タンムの槍が抜けない。タンムは槍を放さないよう踏ん張っていたが、トカゲの身もだえに槍を振り回され、転倒した。


 「タンム、槍を放せ! 剣を抜け!」

 タンムは慌てて槍を放し、立ち上がる。


 「タンム、後ろへ! 三人構え! 突き!」

 三人の槍はトカゲに突き刺さり、引き抜いた槍の跡から大量の血が流れ落ち、動かなくなった。


 「やったか! 見事!」

 エリドゥはタンムの槍を引き抜くと、しばし眺め、タンムに返す。タンムは軽く会釈した。


 「こやつ等には槍が有効であったか、成る程、流石アッシュールの隊だ。見事だ」

 「門が焼けちまったぞ」

 ウバルが炎を上げている門を指さす。


 「アッシュールさん。村の方、明るくないですか、燃えているんじゃないですか」

 タンムが村を指さす。アッシュールは目を見張った。確かに、村の方が橙色に明るい。


 「別口から村に入ったか! 行くぞ!」

 エリドゥが剣を抜き、走り始める。アッシュールはタルボに跨った。


 「僕は先に行きます! 三人で行動してください! 指揮はララクさん! では!」

 アッシュールはタルボの手綱を引き、足で腹を蹴り上げた。タルボは嘶き、全速で駆けかけ始めた。


 「まるで、計算された攻撃だ。我らが退治したのはおとりのようじゃないか。なんなんだ、こいつ等、何故村を襲う!」

 アッシュールは槍を右手に構え、村に入る。


 「あ」

 アッシュールは思わず足を止めた。村が燃えていた。村の建物は木造だ。一件が火がつくと、全ての建物に火がつく。村はごうごうと燃えている。地獄が有ったなら、今見ている風景がそうに違いない。

 燃えさかる家から、女性が出てきた。後ろにはトカゲが口を開けている。


 「燃やされるぞ!」

 アッシュールは慌ててタルボを駆け出させる。トカゲは女性を狙って火を噴こうとしている。アッシュールは全速で駆け寄る。


 「きゃああ!」

 女性は尻餅を突き、失禁する。アッシュールは二度、三度馬上から突きを繰り入れる。


 「いやあああ」

 女性は半狂乱で立ち上がり、走って行った。


 「待って、そっちじゃない! トカゲの横に逃げるんだ!」

 アッシュールは火を噴かれない方向に逃がそうと叫ぶが、女性はトカゲの正面を逃げるように走り始めている。女性はアッシュールの声に気が付き、振り返える。女性が安堵の表情と同時に橙色に包まれ、女性は倒れた。


 「おのれ!」

 アッシュールは槍を構え、タルボを駆る。アッシュールの目線には口を開いたトカゲがいた。


 「あああああ!」

 アッシュールは絶叫と共に槍を突き刺す。


 「お前は!」

 二度、三度、四度と繰り入れる。すぐにトカゲは動かなくなる。


 「一体何が! 僕たちが何かしたのか!」

 アッシュールは大声で叫ぶが、答えは燃えさかる木材の音と、悲鳴と、建物を何者かが叩く音だ。

 アッシュールは物音がする方へタルボを走らせる。トカゲがドアを破ろうと、体当たりをしている。アッシュールはトカゲの目に槍を突き刺す。トカゲが体当たりを止めると同時に両手で槍を繰り出す。槍はトカゲの頭蓋骨を粉砕し、脳漿を飛び散らせる。


 建屋の中に人がいるようだったが、アッシュールには何処が安全なのか、わからなかった。外に出てもトカゲの餌食になりそうだった。


 「アッシュールです! 燃えない限り、家から出ないでください! では!」

 アッシュールは大声で叫ぶと同時に眩しい光に目を刺された。広場の方からだ。

 アッシュールはタルボを広場に走らせる。


 アッシュールは再び目を見張る。巨大なトカゲだ。最初に遭遇したトカゲと同じくらい、十ジュメはあろうかというオオトカゲだった。

 オオトカゲは大きく開いた口を閉じ始めた。口の先には、四名の剣を持った男がいた。男達の体は炎を吹き上げ、命を失った順から倒れていった。


 「エリドゥさん!」

 エリドゥの隊だった。四名で斬りかかったのだ。正面から斬りかかったのだ。トカゲは人の足の速度は捕捉出来るのだろう。馬に乗っていない限り、正面から斬りつけると炎の餌食になるのだ。


 「おのれ!」

 アッシュールは槍を両手で構え、タルボを足で強く挟む。アッシュールの意を汲んだタルボは全速力で巨大トカゲに向かっていく。


 「あああああ!」

 アッシュールは槍を構えたままトカゲに突進する。トカゲは火を噴こうと、大きく口を開ける。トカゲの口が明るく光った瞬間、アッシュールは全力で槍を口にたたき込んだ。反動でアッシュールがタルボから跳ね上げられる。トカゲは大きく絶叫した。アッシュールは立ち上がると、剣を抜き、トカゲの顎下を貫いた。剣はトカゲの顎から脳を突き刺した。トカゲは絶叫を上げ、体をねじらせる。尻尾がアッシュールに当たり、はね飛ばされた。


 アッシュールは背中を強く打ち、息が出来なくなった。

 痺れる体を起こすと、トカゲが口を開き始めている。

 アッシュールは起きようと試みるが、体は言うことを聞かず、立ち上がることが出来ない。


 「立て、アッシュール、立て!」

 アッシュールは鼓舞するが、体は悲鳴を上げ、アッシュールの意志通りにならなかった。


 「ごめん、ルアンナ、敵を取れなかった」

 アッシュールは目を閉じ、自らの身に訪れる最後にそなえた。目を閉じると同時に意識が遠くなり、気を失った。


いよいよ決戦が始まりました。

アッシュールの、村の運命は?!

初ポイントを頂きました。

ありがとうございます!とても嬉しいです!

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