表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この道を下ってゆく  作者: 美冬
第2章
2/3

第2章

とうとう海にたどり着いたブラックは、小さなベンチに座る男を見つけた。



隣に座ると、男は少しブラックとの距離を空けた。潮風によって傷んだ木のベンチは、ギシギシと音を立てる。



男の名前はブラウン。自らを死んだことにして、仕事、家族、全てから逃げた哀れな男。この町では人と関わろうとはせずに生きている。



「ブラックさん、アンタは悪魔だ。本当に酷いことをしやがる。……だが、今回ばかりはアンタに感謝しなきゃならん」



ブラウンは悔しそうに、そう吐き出した。ブラックは何も語らない。



「俺達は何かを捨て、失った者達だ。アンタはどうなんだ。何故こんなことをする?」







「……これは、私への罰なのです」




ブラウンは驚いた。ブラックが住人と言葉を交わすことはない。初めて聞いた彼の声は、人間としての感情が欠如しているように感じた。覚えさせられた言葉を、ただ読み上げているだけのようであった。



しかし、それ以上語ろうとはしなかった。



「じゃあ、俺は行くよ」



ブラウンはそう言って海を離れていった。ブラックは何も、受け取らなかった。



雨が降り始め外套が濡れても、ブラックはしばらくの間、その場所を離れなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ