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√トゥルース -053 覗きは駄目!絶対に!

明けましておめでとうございます

今年も皆さまに幸おおからん事を


低人気作品ですが、今年もよろしくお願いします。



「そういえば貴女たち、みんな呪い持ちって言ってたね。じゃあフェマちゃんも?」


 思い出したように聞いてきたのはカーラさん。え? みんな呪い持ち?


「ん? ああ、そうじゃぞ。ま、わしの呪いも人様にはよう言えぬものじゃがな。勿論、坊もじゃ」


 ちょっ…… じゃあ……


「みんなって事はシャイニーさんも?」

「そうなのよね~。こう見えてシャイニーさん、本当はすっごく可愛いんだから。ね~」

「そう言ってやるな、ラナン。月夜以外は呪いに苦しんでいるんだからな」


 得意気に言うラナンさんを窘めるカーラさん。でも、どういう事なの?確かにあの顔の火傷のような痕が無ければ可愛いんだろうな、とは思うけど……


「もしかして、そのお顔は呪いのせいで?」


 あっ! そうか! 流石は姫様。どうやら当たりみたいで、シャイニーさんが姫様に項垂れながらも頷く。そうか、あの顔は呪いであんな痕が。

 聞けばとても気の毒な呪いで、そのせいで孤児院ではずっと虐げられてきたんだって。そしてつい最近、あの男の人が月夜にだけその呪いが解ける事に気付いたんだそう。

 逆を言えば、それが呪いのせいだって事に気付いたのがつい最近って事よね? それを知ってどう思ったんだろう。知ったところで呪いじゃあどうしようもないから、悔しかったんじゃないかな?


「そうそう。シャイニーさん、ミック様から月下姫なんて付けられてたくらい可愛かったんだから。ね~」

「だ、か、らっ! ね~、じゃないわよ! 普段はお化粧しなくちゃいけないんだから、全然良くはないわよ!」


 唾が飛ぶほどラナンさんを叱るカーラさんだけど……もう少しコソコソと。


「お兄様がファーラエ以外にそのような愛称を!? 信じらんない……」


 姫様の言葉に、それが非常に珍しい事なんだと察するけど……それがどれだけ珍しい事なのかがピンとこないよ。すると俯いていたシャイニーさんが、更にどよーんとして呟いた。


「ウチ、まだその時の顔を見てない……」


 そうなの? まあ、確かに鏡なんかが無ければ自分の顔を見る事は出来ないけど、一度も見てないってのもね。自分の知らない自分の顔を他人ばかりが知っているだなんて、それはそれで何か嫌かも。


「ねえ。お風呂を出たら外に涼みに出ない? この時間なら月が上がってくる頃かも。勿論、手鏡を持って、ね」


 姫様の提案にシャイニーさんが顔を上げる。見た事が無ければ見に行けば良い。幸いにも今夜は寝る前に月が上がってくるだろうから。

 姫様は本人が見たいのに便乗して自分も見るつもりなんだろうけど、それはあたしもそう。見た人がみんな絶賛しているんだから、少しばかり興味が。いや、凄く見たくなっちゃったけど、良いよね? あたしも一緒に見に着いていっても良いんだよね?






「あ~気持ち良かった~」

「はしたないわよ、ラナン」


 お風呂から出て脱衣所に並べられた長椅子に座るラナンさんを窘めるカーラさん。

 そりゃそうだよ、裸んぼのままで座っているんだから。でもちょっと長湯し過ぎて火照っている今なら、それも致し方ないって思う。だって本当に今は服を着る気にならないんだもん。他の人たちも身体を拭くのがゆっくりで、急いで服を着ようとしている人はいない。姫様ですら下着を着せようとする侍女のアベリアさんやアマリリスさんを止めて手で煽っている。


「だって~。汗が噴き出してくるんだもん。仕方ないじゃん。そういうカーラさんだって服を着ようとしないじゃん、ね~」


 仰け反るように両手を長椅子の後ろに突くラナンさんだけど、この人がそんなにも堂々とした格好をするのはこの中で最も胸が大きいからだと思う。その圧倒的な胸を見せびらかしせるような格好をするのはカーラさんでなくても苦言を言いたくなると思う……んだけど…… どうして姫様もその隣に同じように座ったのですか!?


「わあ、これ気持ち良い♪ ね、ね。皆さんもどう? とても気持ち良いわよ?」


 淡い桃色(ピンク)に染まったモチモチな柔肌を惜しげもなく晒す姫様、超大胆! カーラさんの方が胸が大きい分、破壊力も大きいけど、理想的な体形に小振りながらも形の良い胸を持った姫様の裸体の破壊力は十分に同等(タメ)じゃないかしら! 同性なのに鼻血出そう。せめて前を隠して!


「ひめさまぁ、いつまでもそんな恰好でいらっしゃるのはおやめくださぁい。はやくお召しをぉ」

「まだ待って。汗が引かないと下着が濡れちゃって気持ち悪いでしょ?」


 下着を手に姫様に泣きつくアマリリスさんを嗜め、あられもない姿を晒したままの姫様。肌を伝う汗が艶かしくて、同性なのに思わず生唾を飲み込んでしまう。せめて手拭いを使って!

 なんて思ってたら、他のみんなも下着を着ずに同じように長椅子に腰掛け始めた。ええ~!!

 流石に他のみんなは手拭いで前を隠しているのだけど……汗で湿った手拭いが身体に張り付いて何とも艶かしい……ぷはっ!も、もうあたし耐えられないよっ!どうしてこの人たち、こんなにも平気な顔してるの!?


 姫様は普段、侍女の人たちに着替えを手伝って貰ってるから慣れているんだろうって想像できる。ラナンさんは単に自信の表れ? カーラさんはもしかしたら王族に嫁ぐ事になれば姫様の様に侍女が付いて着替えを……って、さっきの会話からすると元々貴族の人っぽいから、もしかしたらそういうのにはもう慣れてる? それからシャイニーさんは、孤児院で大勢の中にいるのに慣れているからなのかな。お風呂とかみんないっぺんに入るんだろうしね。 じゃあニナさんは? この人も貴族っぽいからカーラさんと一緒で見られるのに慣れているのかな?


 これ、あたしも一緒になって涼んだ方が良いよね。確かにまだ汗が引かないし。このまま服を着たら汗で下着とかが湿っちゃって涼みに外に出たら風邪をひいちゃいそう。仕方ないからみんなに倣おう。でも恥ずかしいから手拭いで隠すけどね。


「ふふふ。何だか不思議よね。ファーラエ、お兄様を追ってきたのに、こうして知らない人まで交えて裸で並んでるなんて……宮殿ではこんな事、先ず無いし。ねぇ、こういうのって町の人たちは裸の付き合いって言ってるんでしょ?」

「……えっ! あたしですか? ええっと、ちょっと違うような気もしますけど、まあ概ねそうなんじゃないですかね」


 慌てて姫様の問い掛けに答えたけど、お風呂を出てからこんな裸のままでお話なんてするものだったっけ? てか、姫様って町の人の暮らしに興味があったのかな。それなら納得かも。

 みんなでお風呂に行くって話になった時、姫様はとても乗り気だった。異様な程に。こうして大勢でお風呂に入るなんて事は、姫様にとっては滅多にない事なのだろう。況してや一般人(あたし)と一緒にだなんて。普通は有り得ないもんね、姫様が一般人とお風呂だなんて。警備の問題とかどうなってるんだろう。


「……何だかあたし、場違いなところに来ちゃったな。明日、兄さんに言ってここを出ようかしら」

「あら、駄目よ、貴女は少し身体を休めなければいけないんでしょ。それに明日はみんなで下着を作るって決めたんだし。ん~、思い浮かべるだけで楽しそうね♪」


 満面の笑みな姫様の後ろにポンポンポーンと花が咲き乱れる幻が見えちゃったり……あれってどうなってるのか知らないけど、どうやらあたしは逃して貰えないらしい。ちゃんと休まるのかな、あたし。






 汗が引くまで、忘れられ勝ちだったフェマちゃんの携わった夕食の話題に盛り上がってから和気藹々と服を着ていると、シャイニーさんが例の首飾りを着けているのが見えて更に話が盛り上がった。そういえばシャイニーさん、服を脱ぐのがあたしと同じように遅かったな。あれを外していたからか…… って、え? もうひとつの首飾りに青っぽい石が付いていたけど……まさかあの石、レッドナイトブルー(・・・・・・・・・)じゃないわよね? シャイニーさん、最近まで孤児院にいたって言うし……そんなのを持っている筈は……

 その後、外で涼もうとホクホク顔で脱衣所を出たところで思わず足を止めた。


「貴様はっ!! 何度こうして捕らえられれば気が済むのだ!」

「いや、だってよ。隠密の訓練にはうってつけじゃん?」

「だからってどうして風呂を覗こうとするんだ!」

「そんなの決まってるじゃん? そこに桃源郷があるからだよ。わかんねぇかなぁ」

「分かって堪るか! 姫殿下だって入っているんだぞ! もう我慢ならん、ミックティルク殿下に報告するのと、この場で斬り捨てるのと、どっちが良いか選ばせてやる」


 さあ選べ!と上から剣を突き立てて怒りを顕にする女騎士さんに乗っかられているのは、尻だけ突き上げて廊下の床にうつ伏せになっている男の人。両手を挙げて降参を示していた。

 今の会話から、あたしたちが入っていたお風呂を覗こうとしていたらしい。ええっ!?それ、ホントにヤバかったんじゃ!?

 だってついさっきまでみんな裸で座って話していたんだよ?この女騎士さんが止めてなければ、あたしたちみんな裸を見られていたって事なんだよ?


「そんなに怒らなくたって良いじゃないか。あんただって賊を捕らえる訓練になっているだろ?」

「ああ言えばこう言う。やはり問答無用で斬り捨てれば良かった。いや、今からでも遅くはないな。よし、じっとしてろよ。ミックティルク殿下には事後報告で充分だ」

「いや、ちょっ、ちょっと待て! 話せば分かる! あ、ほら。姫殿たちが見ている前で殺傷事は駄目だろ? な、な?」


 首元に当てていた剣を振り上げた女騎士さんを、必死になって止める男。一思いにやっちゃえば良いのにとは思っちゃったけど、マジでやっちゃいそうなやつだこれ!


「うわ~、またミアスキア? 懲りないのね~」

「あれで呪いじゃないって言うんだから、もう病気ね。一層の事、息の根を止めてくれた方が世の中が平和になるわ」


 ゴキブリを見るような目で床に這いつくばる男の人(ミアスキア)を罵るラナンさんとカーラさん。実際、男の人は今にも潰されそうになっているゴキブリその物のようだったので、比喩的表現とも言い切れないんだけど。


「イキシア、もうその辺にしてあげて? 何かの間違いなのかも知れないじゃない」

「ひ、姫殿下、しかし…… コイツは姫殿下が入っていた風呂を覗こうとしていたんですよ? 充分不敬罪に問えます」

「そうです! この方、覗き見しようとするなんて失礼ですよ! 昨日なんてわたくしたちの下着姿もずっと見てたって話ですしね!」


 ゴキブリ……じゃなかった、男の人を姫様が擁護するのを咎める女騎士さんに珍しく援護射撃するのはニナさんだった……んだけど、下着姿をずっと(・・・)見られたってどういう事!?


「……この事はミックティルク殿下に報告させて貰うからな。覚悟しておけよ」


 いくらニナさんが擁護したからって、姫様のお願いを蔑ろに出来なかったんだろう、女騎士さんが妥協して退いてくれた。殺傷事にはならなくてホッとしたけど、覗きは良くないよ!






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