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√トゥルース -020 王族?



「もう一度聞く! そこで何をしている! ここは立ち入り禁止になっている筈だぞ!」


 岩場の上から見下ろす一人の影。ビーチの貸し出し事務所で注意を受けていたトゥルースはひたすら謝るしかない。が、ここで問題が。


「ん? お前ら……なんて恰好をしてやがるんだ? てか、そっちの小さい方は女の子!? まさか……おい、お前! その女の子を襲おうとしているのではないだろうな!?」

「えっ!? い、いや! 違いますっ! こいつは俺の連れで……」

「嘘をつけ! 服を脱がして淫らな事をしようとしていたのではないか!? しかもそんな小さい子をっ!? おいっ! 誰か来てくれ! 不審者だ! 衛兵! 衛兵はいるか!」

「ちょっ! 話を! 話を聞いてくれ!!」


 大事(おおごと)な事態になりそうな状況に狼狽えるトゥルースだが、既に手遅れのような気がする。しかし、それでも抗おうとするトゥルース。


「ほら、フェマ! 迷惑だから早く戻るぞ!」

「おい! こら! その子から離れるんだ!」


 フェマの手を取り引っ張ろうとするトゥルースを止める岩場の上の男は岩場の向こう側から来ているであろう兵士に合図を送ると、ピョンピョンと降りてきてトゥルースの行く手を塞ぐ。

 随分と身軽な男だと感心するトゥルースだが、既に逃げ場がない事に気が付いたのはその後だった。いや、直ぐ横に広大な湖があり泳いで逃げれば良いのかも知れないが、フェマもいるし泳ぎに自信がない。バレット村には小さな川が流れているが、泳げる程の大きさはなかった。昨日と今日で多少泳いでみたが、短距離しか泳げなかった事を思い出して自殺行為だと踏み止まった。そもそも立ち入り禁止区域に入り込んでしまったが、他には何も悪い事はしてない。そう開き直るトゥルースだったが、目の前の男に通じるだろうか……


「何事だ、ラッジール!」

「この男を捕らえよ! その子を拐おうとしている!」

「何!? 子供を!? こ、こいつ! 子供の服まで脱がして……一体何をしようとしていたんだ!」

「いや、だから。この子は俺の連れだってばさ。服を脱いでいたのは水着を持っていなくて、これで泳いでいたからだ! フェマも何とか言ってくれよ!」


 手を取るフェマに助けを求めるトゥルースだったが、その幼女が一瞬顔をニヤリとさせた。悪い予感しかしないトゥルースの勘は大当たりだ。


「いや~ん、男の人に乙女の胸を見られちゃった~! もうお嫁に行けな~い!」

「……お前、誰だよ!」


 突然手で胸を隠して少女のような可愛らしい声で叫び出すフェマ。普段のフェマを知る者なら誰もがトゥルースと同じツッコミを入れたに違いないが、悪戯が過ぎる。益々トゥルースの立場が悪くなったその時、新たな声が。


「おい、何があった。女の声が聞こえたようだが」

「で、殿下! 危ないのでこちらへ来ないで下さい!」

「えっ!? 殿下!? 殿下って……」

「……しもうた。ちとオイタが過ぎたか」


 兵士の言葉に、揃って顔を顰めるトゥルースとフェマ。やはり立ち入り禁止区域には入るべきではなかったかと後悔するが、遅すぎである。


「ん? 何だ、その子供は? 服を着ておらぬではないか」

「そこの男が子供に何かしようとしていたようで。直ぐに拘束します!」

「いや、だから誤解だって!」

「ええい、黙れ! 大人しくしろ!」


 容姿端麗な殿下と呼ばれた若い男が、フェマの姿を見て首を傾げる。流石のフェマも、これだけの見知らぬ男たちに肌を見られ恥ずかしくなったのか手で胸を隠していた。

 が、そこに更に声を掛ける者が二人。


「ルー君~! フェマちゃ~ん! 何をしているの~?」

「ルース様~! フェマさ~ん! そこは入っては駄目な所ですよ~!」


 こちらへ来るのを見ていたのだろう、シャイニーとティナが呼びに来たのだ。だがそこは立ち入り禁止区域ではあるのだがプライベートビーチの延長にある岩場である。普通であれば他人はいない筈だからと油断していた二人の姿は……


「……ぇ? な、何で人がっ!?」

「ひゃっ! み、見ないで下さいっ!!」


 つい先程まで水遊びをしていた二人は濡れた下着姿のままだった。見知らぬ男たちを認識して慌てて後ろを向く二人。


「おお、これは私の従者たちが失礼しました、お嬢さん方。おい、どうやらこの二人はあちらの方々のお連れのようだ。手荒な事は止めて戻ってこい。そこの殿方。お詫びにこちらの屋敷に招待したいのだが、あちらのお嬢さんたちと一緒に来て頂けるか? 後で私の従者を案内として一人向かわせよう」

「えっ! しかし!」

「良い。そもそもこちらの敷地は、今私が立っている場所までだぞ? お前たちの方が不法侵入しているという事が分かっているのか?」

「うっ! ですが……」

「……聞こえなかったのか? 戻れと言った」

「わ、分かりました」


 妙に迫力のある声色を出して、ラッジールと呼ばれた若い男と兵士の二人をすんなりと岩場の向こうに退かせる殿下と呼ばれた容姿端麗な男。恐らくこの帝国の王族なのであろう。この岩場の向こうは王族管理の敷地だと聞いていたから間違いないだろう。しかし、また面倒な事になった。詫びに屋敷に招くと言うが、そこで何を言われるのか……このままトンズラしたいところだが、だからと言って王族の誘いを断る訳にもいくまい、と溜め息を吐くトゥルースだった。





「ええっ!? 王族の人に誘われた!? それってウチたちも!? 大変!何を着て行ったら……」

「その方は殿下って呼ばれてたんですよね? 容姿端麗な若い男の方……いえ、違う筈。あの方はまだ試用期間……を終える頃?」


 大慌てするシャイニーの隣で、ブツブツと呟きながら考え込むティナ。いや、ティナさん? 濡れた下着姿のまま考え込むのは止めましょうね? 組んだ腕が胸を押し上げて谷間が凄い事になっていて、(トゥルース)が生唾を飲み込みながら見てますよ?

 二人の下着姿を見慣れたと言っても、それは遠目に見ての事。こうも近くで面と向かってだと異性を意識しない事は出来ないトゥルースの股間には小さなテントが張っていた。それに気付くのは丁度目線の高さのフェマだけだった。若いのぅと下衆な笑みを浮かべて呟くさまは、折角の可愛らしい幼女の顔を台無しにさせていた。


 兎に角、相手は王族であるには間違いない、失礼にならないような恰好をしなくてはと慌てて着替えに天幕に戻る四人。しかし問題が……


「わたくしの着る服はどうされるのですか!?」


 そう、普段着は買い足したが、正式な服はこの町を出る際にでも見ていこうと話していたのである。普段着だけでも半日掛けて選んだティナ。正式な服を選ぶのに時間が掛かるのは目に見えていたので後回しにしていたのであった。


「仕方ない、侯国の服で我慢してくれ。あれだって侯国では正式な服として通用するんだろ?」

「それはそうですが……まぁ、我が儘を言っていても仕方ありません。そうする事にします」

「ティナ嬢、化粧を忘れるでないぞ? (帝国の王族が相手ともなれば身バレも大いに問題じゃろう?)」

「ああっ! そうでした! ニー様! お化粧を手伝っていただけますか!?」


 属国ではないが、親交のある国故、王女たる自分の姿を知る貴族も多いだろう帝国で、それも王族を相手に身バレでもすれば、何故、どうしてと邪推され竜化の呪いが公になりにでもすれば身の危険も出て来よう。いつ呪いにより竜化し街を破壊されるかも分からないからと命を奪われるかも知れないのだ。

 王国には竜の言い伝えが残っている。それは当時侯国も国の一部だった帝国にも話が残っていてもおかしくはない事は推測された。

 竜化が解けるところを見ていたトゥルースやシャイニーが誰よりもティナを信じている事は言うまでもないところだが、そのティナが王女だという事まで知るのはフェマだけだ。それを知られれば今の関係が崩れてしまうかも知れないとティナは危惧する。

 宮殿で竜化してしまい、人里離れた僻地へと連れて行かれた上で軍の監視下に置かれたティナは、国王である親に見放され何かあれば軍によって殺されていたかも知れない。それに竜化が解けた事が知られたところで宮殿へと無条件で戻されるとは思っておらず、その事を考えれば竜化が解けた自分を連れて逃げ出してくれたトゥルースは命の恩人である。更に竜化を解いてくれたのもその彼なのだと確信していたティナは、感謝してもしきれない恩があるので既に見られた肌を見られるのもトゥルースにだけは許せていたのだ。しかし、そんなトゥルースにまで見放されてしまえば生きてはいけないと、その身分を偽る事にしたのだった。




「主の命によりお迎えに上がりました」


 丁度着替えの終ったタイミングを見計らったかのように現れた、ピシッとした格好の男性。老齢なその人がそれぞれ四人を見渡しうんうんと頷く。


「あの……俺たちの格好は失礼にならないでしょうか」


 おずおずとその男性に伺うトゥルース。こんな時は聞いて確かめた方が良い。


「フム……まさか正装をお持ちとは。主はそこまでは求めてはいないでしょうが……勿論問題はありません」

「そうなんですか!? しかし……お詫びにと仰ってましたが、寧ろお詫びしないといけないのは俺たちでは? 立ち入り禁止のところへ入ってしまっていたのは俺たちなんだし」

「いいえ。聞いたところによると、その場はまだそちらの敷地内だったという事です。それを侵犯したのはこちらの方でございまして。随分と手前で立ち入り禁止としていたのは、何かあってはいけないと気を遣い余裕を見ての柵設置だったのでしょう」


 だから、柵を設置した貸出し事務所に感謝こそすれ、こちらに詫びなどする事は必要ないと言われ、困惑するトゥルースたち。


「でも……それこそ俺たちがお詫びに招待される謂れは無いと思うんですけど」

「いや、それは……これは私の一存で申す事ですので聞かなかった事にして欲しいのですが、我が主はそちらの女性方と言葉を交わしたいのだと思います。ですので丁度良い口実が出来たとでもお思いなのでしょう」

「「「ええっ!?」」」


 王族はそんな我が儘を言っても良いのか!? と戦慄するトゥルース。シャイニーは、えっ!? ウチたちの事!? と目を丸めるが、ティナは益々不味い事になったと顔を顰める。出来れば帝国の王族とは関わりたくなかったのに、と。

 ティナは辞退を申し出るが、その男は自分を助けると思って付いてきて頂きたいと懇願する。そう言われては行かざるを得ないだろうが、狡い言い方だと一人愚痴た。


「のう、その女性方とはわしも含まれるのか? のう、そうなのか? あ奴は幼女嗜好(ロリコン)()でもあるのか?」





*おっと、下衆顔の作者がとおりますよっと。

 嘘っぱち幼女の裸ん坊回はこれで終わりです。(誰得?)

 同時に少年少女の下着姿もここまで。暑さから箍が外れた四人……これから大丈夫なんでしょうか(作者も知らず。どうするんだ?これ)



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