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√真実 -010 まほう?

【あらすじ】

夢の中の世界では、帝国に入ったけど姫様が体調を崩したから湖の畔の町に移って休暇(バカンス)だお/

現実世界では、学力テストが終わった!と思ったら料理対決に発展だおσ(^_^;)?



「ん? 良い匂いがするが……この匂いはバナナだな」


 キッチンに入ってすぐ、くんくんと鼻を鳴らす味久。まだスイッチを入れて間もないのに気付くとはなかなか鼻の利く人だと感心する真実。


「あ、そうです。昨日デザートを作っておいたんですけど、数が足りなくなるので急いで作ってるんです」

「ほう? 真実君はそんな事も出来るのか。護身術の件と言い、これは引き抜きたくなるな」

「味久君、私としてはそれは避けたいところなんだが……こうして家族と会うのですら簡単ではないのだからな」

「まあ、それもそうですね、飛弾さん。自分なんて……」


 言葉を詰まらせて項垂れる味久の様子に、どうしたんだ? と首を傾げる男子三人。


「うちの職場の性質上、出会いがなくてな。独り者が多いんだ。味久君もその内の一人でな」

「言わないで下さいよ、飛弾さん。虚しくなる」

「君は料理が出来るんだから、胃袋を掴めば良いんじゃないか?」

「でもいつ帰ってくるか分からない男なんて女は待っていてくれませんよ。美味い物なんて店に行けばいくらでも食べられるし」


 何やら切実な声が聞こえてくる。聞いていて切なくなってきた三人。今は学校へ行けば周囲には女子たちがたくさんいるが、職場を間違えるとそんな事になるのかと戦慄するのだった。


「味久さんは料理が出来るんですか?」

「まあ、少しな」

「何を言ってるんだ、味久君。出来るも何も、プロのくせに」

「「「えっ!? プロ!?」」」

「味久君はうちの職場の司厨長……料理長なんだよ」

「「「ええっ!? 料理長!?」」」


 驚く三人。いや、少々ふくよかなお腹を見てちょっと納得か。それにしても料理長が敬語を使う総司とは……と首を傾げる。飲食店等での料理長と言えばそれなりに権力があるだろう。しかし、公務員だと聞いていたのでそれはない。しかし公務員で料理長? 三人とも想像が付かないが、智樹は更に首を傾げた。


「さっき親父さんって司厨長って言ったよな? 司厨長……司厨……どこかで聞いたような?」


 やはり思い出せないようだ。諦めきれない智樹が唸る。あれからも総司の職が何なのか当てるクイズは継続中であり、中々当てる事が出来ずにいた。


 キッチンに入った総司と味久は追加で買ってきた食材や調味料を並べていく。勿論? 酒類は冷蔵庫に。どうやら食事後は酒盛りするつもりらしい。


「たぶん聞いても教えてくれないと思うけど、何が出来るんだろうな」

「男の料理と言えばそんな凝った物ではないと思うけど……でも料理長も同じ物を作るんだろ? 何が出来るか分かんねぇな」

「勿論俺も何も聞いてないから分からないよ。父さんが料理を作るなんて今まであったかな?」


 首を捻り続ける三人に、気を良くする総司。勿論味久にも何を作るのかは口止めしているが、途中でバレるのは仕方ないだろう。早速料理を始める二人だったが、食材を切るスピードがハンパなかった。プロの仕業である。見ていると切るのは味久が全てやってしまうようだ。その辺は対決と言っても協力し合うところは仲が良いのだろう事は想像が付く。どちらかというと、味久が総司を手伝っている余裕すらあった。まぁ、当日になってから参加を表明したのだから当然だという事なんだろうけど。



 暫くすると、玄関のチャイムが鳴った。女子たちが来たようだと真実が迎えに行く。後ろで、祐二が智樹にニヤニヤしながら耳打ちしているとも知らずに。


「やあ、遅かったね。入って入って……って、香奈さんも一緒だったんだ。ん? あれ? 光輝は?」


 玄関前にいたのは、先頭に綾乃、真ん中に香奈、後ろには華子といった順の縦並びだ。しかし三人の姿は真実には目に入っていなかった。一緒に来ると言っていた光輝の姿が見当たらないのだ。


「はぁ~、いつまでそうしているつもりなんだ? キラリ。ワタシの服に皺を付けるつもりなの?」

「そうよ、光輝。隠れてないで出てきなさい」

「……で、でも……」

アヤちー(綾乃)カナ(自分)の見立てだから大丈夫よ、キラ(光輝)ちゃん。マサ君に見せてやりなさい。一発で悩殺よ♪」


 随分と仲良くなった様子の綾乃と香奈。いつの間に? と思う真実だったが、今は姿が見当たらない光輝が先だ。しかし光輝の声が聞こえてきたので、来てはいるようだと真実が安心するのも束の間、背の高い華子の後ろに隠れていた光輝が静々と姿を見せると、それを見た真実が目を丸くして固まった。


「え? き、光輝?」

「……お、おかしくないかな? 真実くん」

「いや、その、ええっと……」

「ちょっとぉ、飛弾ぁ。何か言ってやりなさいよぉ! あたしたちの事まで無視しちゃってさぁ!」

「そうよ? マサ君。これ着せるの苦労したんだから。女の子を褒めるのは男の義務よ? 義務!」

「あははは。義務かどうかは置いといて、感想くらいは言ってやっても良いと思うよ? ヒダ」


 肩にフリルの付いた白いノースリーブのブラウスに、白に青い小さな花柄のガウチョパンツ姿で、ブラウスの裾をボトムに入れる(ブラウジング)事で控えめな胸を補っていた。そして髪は登校仕様のふたつ結びは解かれてシンプルに休日仕様のポニーテールとなった光輝。顔は薄らと化粧されて幼顔から大人びた顔つきに。制服姿だった先程までとは打って変わったその姿に、真実が目を奪われて言い淀んでいると他の三人から非難の嵐が。


「うん、ええっと、その……すっごい似合ってるよ、光輝。めっちゃ可愛くて大人びて見える」

「……ほ、ホントに? ホントにおかしくない? ウチ、こんなの着た事なくて……」


 うん、と真実が肯定するとパアっと光輝の顔に花が咲く。爆ぜろこのリア充どもめ!(作者心の叫び) そして真っ赤な顔のままそんな受け答えする真実と光輝の様子に、ニヤニヤが止まらずうんうんと頷く見守り隊三人だったが、いつまでもその雰囲気を続ける訳にもいかない。


「で、マサ君。アタシたちの感想は?お呼ばれするんだからって目いっぱいオシャレしてきたのはキラちゃんだけじゃないんだけど」

「え? あ、うん。みんな似合っている……と思うよ?」

「ちょっとぉ! 何よそれ! 飛弾、光輝と比べて随分と差がない? もっとこう、綺麗だねとか可愛いねとか具体的な褒め言葉はない訳?」

「あ、うん。三人とも綺麗だね。可愛いと思うよ」

「わ~、無いわそれ~。感情籠ってな~い。それ駄目なのワタシでも分かるわ~」


 小さなリボンで腰を絞った紺色ノースリーブワンピース姿の香奈、フリルの付いた白のチュニックに七分丈デニムパンツ姿の綾乃、淡い黄色のリブTシャツに紺色白柄のワイドパンツを履いた華子。それぞれいつもとは違った装いだったが、光輝の姿にそわそわしている真実にはその要求はハードルが高かった。そもそもそんな言葉を口にした事は今まで無かったのだから。だが視線が光輝から離れた事で、真実の目に漸く入った物が。


「てか綾乃も香奈さんも、その手にしてるのは何!? 何でこっち向けてるんだよ!?」

「ああ、これ? 気にしなくて良いわよ? 道場のお姉さんたちに頼まれてるだけだから」

「そうそう。マサ君とキラちゃんの初々しい姿を収めて来いって指示を受けてるのよね♪大丈夫、大丈夫。ネットに晒すような事はしないから♪」


 サラッと怖い事を口にする二人の手にはスマホ。当然そのレンズは二人を交互に追っていて……


「あの人たちが!? それに何!? 初々しい姿って!!」

「まぁまぁ、さっきのは許してあげるから早く中に入らせてよ。いつまで炎天下に女の子を立たせておく気?」

「あ、ごめん……って誤魔化さないでよっ! それ、ちゃんと消してよ!?」

「分かった、分かったから。ちゃんとロックを掛けておくから。ほら、暑いんだから早くっ!」

「絶対だよ? 約束だからね?」


 何だか小学生っぽいやり取りになってしまったのを恥ずかしく思いながら女子たちを家に招き入れる真実だったが、綾乃と香奈が消去するとは言ってない事に気付かなかったのはスマホを持っておらず意味が分かっていなかったからなのだ。クッシッシと陰で笑う二人に、程々にしておけよ? と口添えする華子だった。





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