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√真実 -007  ショコラ?

 


「えっ!? いいの!? 本当に!?」


 真実の声がリビングで鳴り響く。テーブルの上には万札が三枚。真実にとっては……というか一般的な中学生にとっては大金だと言えよう。


「ああ。聞けば飯代が偉く少ないらしいじゃないか。それもそこから小遣いを捻出しているなんて、金銭感覚は養われるだろうがお金の使い方は学べないからな。それに私もいれば食費は余計に掛かるだろう。それと……」


 父、総司がニヤッとする。


「彼女が出来たのだろう? 折角の夏休みだ、どこか遊びに連れてってやると良い。勿論中学生らしい場所にが前提だ。後でどこへ行ったのか、どんなお金の使い方をしたのか聞くからな?」


 万年金欠病の真実にとっては信じられない程の好条件だ……が。


「あ~、今週末に実力テストがあるから、遊びに行くならその後かな? それに都合を聞かないと……」

「何だ、夏休みなのにテストがあるのか?」

「そうなんだ。三年生って言えば高校受験だろ? どの高校に入れそうなのかは知っておかないと……」

「そんなの、地元の公立なら余程酷くなきゃ落ちる事はないでしょ?」


 ガラッとドアが開いたかと思えば、ボサボサの頭を掻きながら随分と刺激的なネグリジェ姿の母が。まだ半分寝ているようだ。普段、朝に遭遇する事が無かった真実は一瞬目を剥いて顔を逸らした。


「おいおい、花苗(はなえ)。いくら家の中だって言ってもその格好は不味いだろ」

「……あ~、まあ良いんじゃない? 総司さんと真実しかいないんだし。それよりも声が大きいから起きちゃったじゃない。どうしてくれんのよ!」


 ネグリジェ姿のまま、総司の座るソファーにドスンと座るとそのまま総司に寄り掛かって目を瞑る母、花苗。総司が帰って来た日の夜から、家にいる間は花苗は総司にベッタリだった。

 息子真実としては何とも言い難い気分だ。まるで真実がいないようなベタベタ振りであったが、殆ど母とは顔を合わせる事が無かったのは真実にとっては幸いだった。真実が寝るか寝た後に帰ってきて、真実が学校や道場に行ってから起きてきて仕事へと行く。そんな生活サイクルだったのだが、総司が帰ってきてからは花苗の帰りが極端に早くなっていた。

 普段は大幅な残業をしていたらしく、今は有無を言わせず定時で帰ってきているようだ。普段は文句ひとつ言わずに遅くまで残業をしている花苗が夫の帰宅中だけは定時で帰るのは恒例となっており、仕事も尋常ではない早さでこなしていたので、関係者も文句の言いようがなく、また文句のひとつでも口にすれば鬼の形相が返ってくるのは目に見えていた。藪をつついて蛇を出すような事をする者は病院内には一人としていなかったのだ。


「仕方ないなぁ、花苗さんは。真実、母さんに持っていかれる前にそれを仕舞っておきなさい」


 しなだれる花苗を倒れないよう優しく抱き寄せる総司が、テーブルの上の万札を顎で指す。何か見てはいけないものを見てしまった気分になった真実だったが、有り難くそれを財布に入れた。


「そうだ、真実。金曜日はみんな来るのか?」

「え? どうだろ? 金曜日って言えば、その実力テストの日だから……」

「昼は帰って来るのか?」

「いや、弁当持参で五時間目まであるんだ」

「よし、じゃあ夜は私が作ろう。みんなを誘うと良い」

「えっ!? 父さんが!?」

「ああ、そうだ。まぁ簡単な物しか作れないが、な」

「一体何を作るつもり?」

「それを言ったらつまらないだろう。まぁ、腕によりをかけるから期待しておけ」


 再びニヤッとする総司に、テストの後なら問題はないかと頷いた。





「え? 金曜日の夜? 別に何もないけど……何でだ?」

「いや、父さんが料理を作るって言うから。みんな一緒に食べていけって。祐二や和多野さんは?」

「おう、全然オッケーだ」

「ワタシも大丈夫かな。ってか、何? 全然オッケーって。日本語になってないじゃん、ユージ」

「そうか? ま、別に良いんじゃね?」

「良くはないわよ! そんなんじゃ高校に入れないわよ?」

「いや、それは今関係ないんじゃないか?」

「関係あるわよ! 入試には面接だってあるんでしょ? そんな言葉を使ってたら落とされるわよ!?」

「カコ、おま、おれにどうしても入試落ちて欲しそうだな!」

「そんな事言ってないじゃない!」「……ふ、二人とも喧嘩は止めよ? ね?」

「「うっ……はい」」


 勉強道具を広げている最中に金曜日の予定を聞く真実だったが、またもや始まろうとしていた祐二と華子の口喧嘩に、いつも通り光輝が止めに入った。

 いつの間にか二人の間の呼び方が苗字から下の名に変わっているのにはみんな気が付いていたが、敢えて指摘する事はない。面倒な事になるのは目に見えているからだ。


「じゃあ、みんな来てくれるんだね? じゃあ六人と私たち二人分か。まぁ、大した物は出来ないが、期待はしてもらって良いからな?」


 ダイニングテーブルに座る六人に総司がソファーで珈琲を啜りながら言うが、その結論に待ったを掛ける真実。


「父さん、あと一人……いや、二人になると思うけど、呼んでも良い? 二人とも通ってる道場の人なんだけど、一人はここ最近アルバイトが忙しくて来れてなくてさ、気分転換にどうかなって」

「ああ、一人でも二人でも増えた所で大して変わらないから良いだろう。連れて来なさい」

「なあ、それってもしかして大学生の?」


 智樹がよく話に出てくる人物を思い出して聞いてみると、真実は頷いて答えた。


「そう。夏休みになってアルバイトを始めたんだけど、ベテランのアルバイトの人が二人も辞めちゃったらしくて当てにされてるみたい。実は今日の道場の帰りに誘いに寄ってきたんだけど、碌に話せなかったんだよね」

「あれはかなり参ってそうだったわね」

「……ん。ちょっと心配」

「で、もう一人は? 例の看護師の?」

「いや、違うよ。例のチョコケーキを渡した人で、最近入って来たいっこ上の人なんだけど綾乃と妙に仲良くなっちゃって……チョコケーキの話をした後だったから、話を聞かれちゃったんだよね」



 先日のかき氷を奢ってもらったお礼にと炊飯器で作ったチョコレートケーキ(・・・・・・・・)を翌日に香奈に渡したところ、家で大評判だったと感謝された。とても美味しいガトーショコラ(・・・・・・・)だったと。家族からはクラシックショコラじゃないのか? いや、ガトーショコラだ、と議論が巻き起こったそうだが、結局はガトーショコラだとして落ち着いたそうだ。それを聞いて真実と光輝は顔を見合わせた。自分たちは炊飯器で簡単チョコケーキを作ったつもりだったのに、一体何を作ってしまったんだ? と。


 自分たちのおやつ用に作ったチョコケーキだったが、最初に作った物が評判が良くて材料もまだ充分にあったので、結局四回焼いてワンホールを香奈に、もうワンホールをかき氷を奢ってくれたもう一人である綾乃に、残る二つをみんなで分けて食べたのだ。三合の炊飯器ではちょっと少なかったのかも知れないが、2ホール作れば5.5合炊飯器1回よりも少しだけ多く食べられたとみんな納得の表情だった。おこぼれに与った総司もホクホク顔だったが、花苗()用に一切れ残したのは言うまでもない。匂いでバレる。残しておかないとコロされる。くわばらくわばら。


 実は一晩冷やして食べると別の食感が味わえると知ったのは、当日の焼き立てと翌日持って帰った綾乃が、作り方を変えたのかと質問してきたからだ。全く同じ分量、同じ作り方で作ったのに、一人だけふっくらとしっとりの二種類を味わえたとあって、みんなが再度作るよう要求してきたのは笑い話だが、綾乃だけはもう良いですと手を振ったのはここだけの話である。一体どれだけの量を家で食べたのやら……太るぞ? 綾乃。






やっと真実の母の名前が出ました!今まで出す機会が無かったので。(設定してなかったとは口が裂けても言えない)


いよいよ書き溜めどころの話じゃなくなってきたので、週末は投稿を休ませて貰います。

だって、この先は大まかな流れだけで何の設定もしてないんだもの、行き当たりばったりなのよ。

人一人出すのも名前考えて性格考えて裏設定考えて...さーせん!

って、IMEがお馬鹿さんになってるし...(なき ←漢字も出なくなったw orz

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