ルウを探して ~2~
「ヘクシッ! っ誰か噂でもしているのでしょうか? それとも、僕も風邪を引いたのかもしれませんね」
一人愚痴るマークは鼻を啜りながら、回廊を抜けた。
そこには綺麗な草花や生い茂り、多すぎない程度に木々も生えていた。ここは城の中央にある中庭で、城から後宮へ行くには必ずここに出ることになっている。
マークは石の道を進み、足を踏み外さないように気を付けた。
ここに生えている花々は王妃様たちの紋章とされ、王は木々、その子供たちはハーブや薬草を紋章としている。
もし、石から一歩、足を踏み外せば、王族への冒涜とされ、即刻死刑になると言われている。
真偽は定かではないが、気をつけなくてはいけないことに変わりはない。
マークは上手く進むと、後宮へ続く門が見えた。
当然のことながら男子禁制のため、女性の門番が二人立っている。マークは息を吸って吐き出してから、門へ近づいた。
「何者だ」
「むっ。その格好は親衛隊のようだが、何用でここへ参った」
同じ顔を持つ二人の門番は間髪入れずに言い放った。マークは少し気押しされたが、自分はルウに勉強を教えるためにここに来たのだ。邪な考えを持った者では断じてない。そう思い、拳に力を入れながら、胸に押し付ける。
「ぼ……私は親衛隊所属、マーク・シアルファと申します。本日、ルウリアナ王女の勉学を見るために、お部屋を訪ねたのですが、ご本人様がそこにはいらっしゃらなかったため、途方にくれていたところ、侍女からルウリアナ様はラティナシア様の元にいると聞き、ここに参上したのです。開門を」
「ならん!」
「そのことが真であったとしても、ここは男子禁制! 立ち去れ!」
睨みを利かす二人に、マークは要求を下げた。
「では、ルウリアナ様をここにお呼びください。そうすれば、別部屋で勉学を……」
「ならん!」
「どこぞの馬の骨と、ルウリアナ様を二人きりで部屋に入れるなど」
「「汚らわしい!」」
ハモらせて言い切る二人に、マーク頬を掻いた。
アンリの話を聞く限りでは、ルウはこの先にいると言う。しかし門番がここを通してくれない上に、ルウも呼んでこないと言う。
これでは王の命令に逆らっているのと同じことだ。
どうしようかと、悩むマークの耳に遠くから鐘の音が聞こえた。
「! まずい。もう練習の時間だ」
走り去るマークに門番は細く笑い、「「二度と来るな!」」と叫んでいた。