癒し系の力 ~シルイドside~
ルウの背中から光が生まれた。最初は小さな粒が、ポツリポツリと浮き出ていたのが、今では大量の光となって、降り注いでいる。
「これは……」
「いわゆる癒し系だな」
「……癒し系」
ラビは小さくなった煙草を握りつぶし、口から煙を出した。
「そ。最初にあいつが出していたのは、外敵から身を守る為の攻撃系の力で、今使っているのは仲間を救う為の癒し系の力だ。攻撃があるのなら、癒しもあるだろうと思っていたが本当だったみたいだな」
また無責任な事を言う。
シルイドは深く息を吐き出してから、ルウに視線を戻した。
黄金色の光に包まれているルウは、普段の破天荒ぶりが嘘のように可愛らしい。さすがは、一国の姫である。
年頃になれば、隣国や貴族たちが放っておけないほどの美貌を手に入れるかもしれない。人々は、ルウの事を英雄ルキアスの生まれ変わりだと言って、ルウを男性のように見ているが、やはり違う。
ルウはルウだ。英雄ルキアスの生まれ変わりでもなんでもない。一人の少女なのだ。
ルウの周りに集まっていた光が消えると、ルウはようやく目を開いた。
血の気はなく、今にも倒れそうなほど疲れきった顔をしている。それでも、視線を横にいる少年に向けた。
光が現れる前と、全く変わっていない。
ルウは両手を下げると、片方の手だけをマークの手に重ねた。
「………っ…………!」
マークの手が僅かに動き、ルウは身を乗り出した。
「マーク!」
ゆっくりと開かれる蒼い目に、ルウは自分自身の姿を見た。
「ル、ウ様? あ、れ。ここは……」
「うわああああああああああん」
「え、ぐっ! 重っ!」
ルウは容赦なくマークの腹部に片足を乗っけて、抱きついた。
数秒後、マークは意識を飛ばしたので、エア・フォースで運ぼうとしたが、ルウがしがみ付いて離れなかったので、仕方なくシルイドは近くの村から馬車を借りて、それに二人を乗せて、城へ搬送させた。




