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聖騎士マーク物語  作者: 海埜 ケイ
23/31

再会と絶望2



 ずっと、一緒にいるのだと信じていた。

 アーク兄さん。どうして、死んでしまったの?



~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~



「うああああああああああああああああ」


 ルウから出る光が黒ずみ始めた。黒い光は線のように金色の光に纏わりつき、色を染めていく。

 それと、同時にルウの身体は倒されて、額を地面につける形となった。


「こりゃあ、まずいことになっちまった」


「……三年前の再来だな」


 その言葉にマギストは頷いた。第一王子アークの死。その原因は目の前にいるルウリアナ王女である。その事実を知らない者は、親衛隊の中で誰もいない。

 それは、全員が親衛隊見習いの時に講師の先生に教えてもらっているからだ。その中で知らなかったのは、親衛隊見習いを送らなかったマーク唯一人だろう。

 だが、話しを聞いていても、この光景を見せられれば、王女に近づきたくなくなるのは当然の結果だろう。

 近づいた者は皆殺し。

 それ以上に似合う言葉が見つからない。現にルウの周りにいる山賊はみんな、地に付しているもしくは、重症の怪我を負っている。

 早く医者に見せなければ手遅れになる者が少なくない。だが、下手に近づけば、自分たちが奴らの二の舞になってしまうこと間違い無しだ。


「どうする? ギラン隊長よ」


 ここで、権力を使うな。

 ギランは下唇を噛み締めて、マギストを睨みつけたが、マギストは見知らぬ顔だ。


「これ以上の、被害を出させない為には、お姫様を止めないとダメだぜ?」


 拳を握り、ギランは俯いた。足を出したくても、身体がいうことを聞かない。頭でわかっていても、心が早く逃げろと訴えている。

 どうすれば、いいのか。何が最善なのか。今のギランには、全く検討もつかなかった。


(いや、落ち着け)


 以前、王女が暴走をした時、どうやって止まったのか、思い出す。

 思想を巡らせ記憶をさかのぼり、情報を引き出した。


「最悪だな……」


 今の自分には絶対に無理だ。力を暴走させている王女を諭すことなど、ギランにできることではない。

 もし、できるとしたら…………。

 視線を巡らせると、その人物は倒れた木の枝を使い、中腰まで立ち上がっていた。


「マーク!」


「っはぁ。はあ。はあ。ル、ゥ、さ、ま」


 中腰になったところで、マークは頭から倒れる。駆け寄ろうとしたギランの鼻先を光の刃が通り過ぎた。


「っつう」


「来るなって事だな。ありがてぇ」


 マギストは正直な男だ。確かに、今のルウには近づきたくはない。それを本人が拒絶しているとなれば、相応の大義名分にもなる。つまり言い訳になる。

 ギランは、四つん這いになっても、前に進むマークを見守ることにした。



「ああああああああああああああああああああ」


 甲高く叫び続けるルウの姿に、マークは下唇を噛んで耐えていた。もし、自分がへまをしなければこんな事にはならなかった。ルウが山賊に襲われることも、山賊がルウにやられる事もなかった。


「ル……ウ、…さ……ま……」


「ああああああああああああああああああああ」


 マークはルウに手を伸ばした。ルウの髪にマークの手が触れる直前。

 手の平に穴が空いた。


「! ああああああああああああああ」


 痛いと言うよりも熱い。手だけなのに、神経が全身に行き届いているせいで、身体中が悲鳴を上げる。

 血が流れ、皮膚の中を空気が入り込み刺激する。


「っくぅ。っかあああぁぁ」


 目尻に涙が溜まり、頬を避けて耳に入る。目線をゆっくりと移動させた先には、叫び続けるルウの姿があった。


「っく……。ルウ……」


 身を捩り、少しでもルウの側に寄ろうとするマークに、光の刃は容赦なく降り注ぐ。まるで流星群が舞い降りたかのように、マークの全身を殴打する。


「!!!!!!!!」


 声に出来ない悲鳴を上げた。どうすれば、こんな声が出るのかは分からない。全身が痛みで麻痺してしまっている。ルウの叫びも聞こえない。

 視界は歪んでいるが、辛うじて見えている。マークは腕だった部分を動かし、前に進もうと試みる。

 少しだけだが確かに進んだ。ルウの膝にマークの手が置かれた。



~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~



 温かい感触。この温もりを、私は知っている。

 前に一度、同じように全身で感じていたものだ。



~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~



 ルウは叫ぶのを止めて虚ろな眼を宙に彷徨わせる。黒い光の線がルウの身体の半分以上を侵食してしまっている。


「ル、ウ……。僕は、こ、こ、に…………る」


 膝だったと思われる部分を曲げて、何とか中腰になると、マークはそのままルウに倒れるように抱きついた。


「いつ、も。側に………いる、よ………」


 息をするのも億劫になり、マークはそのまま眠るように息を引き取った。




~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~



 聞いたことのある声。これは、誰の声だっただろうか。

 大切な、家族と同じくらい大切な…………。




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