表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖騎士マーク物語  作者: 海埜 ケイ
15/31

マークを探して2 ~ルウside~



「あ! いたいた。ちょっと、そこの騎士見習いさん。止まって止まって」


 城壁の上で、ルウはようやくマークの同室の友人に出会えた。

 友人は振り返り、改めて見るルウの姿にぎょっとした。左右見回し、他に見習いがいないか確かめるが、いるのは二人組みになった先輩だけだ。

 友人は肩を竦めて、ルウが近くに来るのを待った。

 ルウは肩を上下させて、息を整えてから用件に入る。


「あのさ、マークがどこにいるのか知らない?」


「マーク、ですか? さあ、朝会ったきり、会ってないっすよ」


「そう……」


 ルウが肩を落としている間に、友人は先輩に槍の柄で頭を叩かれていた。


「王女になんて口の利き方をしているんだ!」


「いってぇ、酷いなあ。一応、許可は貰っているんすよ?」


「そういう問題じゃない!」


 友人は再び槍の柄で頭を叩かれた。


「そういえば、マーク・シアルファと言えば、史上初の十代で正式な親衛隊になった子のことか?」


「今さら、何を言ってるんすか? そのマークに決まっているでしょう」


 友人は頭を押さえながら、唸るように言った。

 先輩は友人のことをさほど、気にした様子もなくルウに話す。


「彼なら、国外追放されましたよ」


 あっさりと言う先輩に、友人とルウは目を見開いて、驚き彼を凝視した。


「国外追放って」


「どういうことなんですか! 先輩!」


 詰め寄ってくる二人に、先輩は腕を組んで半歩、身を引いた。


「落ち着いてください。国外追放って言う名の任務ですよ。任務」


「任務?」


「そう、これは正式な親衛隊になったばかりの連中に、必ず行われる任務の一つです。趣旨は分かりかねますがね」


 肩を竦める先輩に、ルウは上目遣いで尋ねた。


「いつ頃、帰ってくるの?」


「さあ? 最低でも半年、歴代の中では二十年も帰れなかった人もいますしね。分かりません」


 半年から二十年も、国を留守にするというのか。もし、そうなってしまえば、ルウの世話係は完璧、違う人間がやることになる。

 ルウは拳を握り、顔を上げる。


「国外追放って、どこに行ったのか分かる?」


「? ええ、大抵は隣国ですね。ほら、歩いて六日の馬車で四日はかかるっていう、西国のことです」


「四日もかかるの? 早く行ける方法はないの?」


「今のところはありません」


 先輩の言葉にルウは重石を乗せられたようだ。追いかけたくても、馬車では人目につきやすいし、徒歩では大人な彼らに追いつくことは不可能だ。

 それでも、やるしかないのだろうか。


「でも、先輩。エア・ファースっていう乗り物なら、二日で着くっていう話じゃないですか?」


 友人の言葉に、ルウは再び友人を見た。


「エア・ファースって?」


「空飛ぶ乗り物ですよ。鳥のように空を走ることができるので、その速さは鷹や馬をも超えるそうです」


 ニッコリと笑う友人に、ルウは希望の光を見た。


「わかった。ありがとう」


 ルウは踵を返して走って行った。


「? 何がありがとうなんすかねえ?」


 首を傾げる友人に対して、先輩はドスの効いた声で、一語一句、区切って言った。


「お、ま、え、はぁ~!」


 ドカッ。ゴン。

 その音と同時に、友人はコメカミを城壁の壁にぶつけた。バンダナを巻いていなかったら死んでいただろう。

 友人は頭を押さえながら、先輩を見上げようとしたが、焦点が合わない。


「な、何するんすか。先輩」


「この馬鹿が! あんな情報を姫様に教えてどうすんだ! すぐに親衛隊の奴らにも教えないと」


「教えたら、どうなるんすか?」


「脱走だよ」


 先輩はそう言い捨てると、友人を無視して走り出してしまった。友人は起き上がらずに、空に浮かび始めた星々を見上げた。

 上は群青、下は橙のグラデーションの真ん中部分で見え始める星々は、まるでおとぎ話の挿絵のように見えた。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ