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特別任務
ルウと喧嘩別れをしたマークはその日の夕方、シルイドに呼び出され、第二会議室に顔を出すことになった。
「失礼します」
扉を開けて中に入ると、そこにはシルイドの他に二人、隊員が立って待っていた。
どちらも今年、正式に親衛隊になったもの達だった。
一人は金髪を頭の頂点だけに残した碧眼の二十六歳になる男。細い体躯で、いつも練習ではマークの次にヘバっていると聞いたことがある。特徴は顎がしゃくれていることである。
もう一人は、昼間、シルイドにマークの降格を申し出た者。ガタイはよく、隊長であるシルイドよりも筋肉が目立つ。色黒で、髪と瞳も黒い、隊長と同じく二十四歳だという。
シルイドはマークを見ると、持っていた書類のページを捲った。
「そろったようだな。さっそく用件に入る。お前たち三人に特別任務を与える」
「特別任務?」
「何すか、それって」
怪訝に思う黒髪に対して、金髪はやる気のなさそうに聞いた。マークは二人の間に立ちシルイドの返答に耳を向けた。
「今から未定までの間、お前達を隣国、送りとする」
突然の事にマークはしばし現実を忘れた。