Ⅱ 新入り
あの女性に会って数日が経った。
あの妙な血が騒ぐ感覚は忘れられない。
今日も僕は仕事をしなければならない。
「レイン! 今日から新しい仲間が加わることになった。」
この人は僕の上司、メイソンさんだ。
「初めまして。私はルークです。よろしくお願いします。」
ルークは驚くほどの目鼻立ちがスッとした美男子だが、無表情だ。
「レイン、ルークに仕事を教えてやってくれ。」
「分かりました。」
「初めまして、僕はレイン・アルフレッド。 レインって呼んで。」
ルークは何も言わない。
どうしたのだろうか。
緊張しているように見えないし、だからと言って馴れ馴れしいという訳でもない。
表情が全く感じ取れないルークは何を考えているのか全く分からない。
しばらくの沈黙が続いたが、レインはそれを打ち壊すように切り出した。
「じゃあ、仕事しよっか。」
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「この荷物を城に運ぶんだ。」
「じゃあ、案内するよ。」
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「やあ、レイン。」
「こんにちは。ブライアンさん。」
「おや? そっちの美男子は?」
1拍置いてルークは口を開いた。
「ルークです。」
「新入り君か! よろしくな~」
「そうだ、レイン。今日も城の内部に届けて欲しいらしい。」
「了解しました。」
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「ここが城内。 大体、城のキッチンに届けるのが多いんだけどね。」
「ここに置けばいいかな。」
相変わらずルークは何も喋らない。
持っていた箱を広い床の上に置いた。
そういえば、この前ここで彼女に出会ったな・・・。
「今日はなあに?」
この声は・・・
「ごきげんよう。」
彼女だ。
「今日はラ・フランスです。」
「そう。ラ・フランスは好物なの。」
そう言って彼女は1つ手に取った。
その時、またあの感覚が蘇ったのであった。