Ⅰ 吸血鬼
「ママ、吸血鬼ってどんな奴なの?」
「そんな話やめなさい! 血を吸われるわよ!!」
そう。世の中では吸血鬼、すなわちヴァンパイアとは
『悪いもの』と言われている。
でも、本当にそうだろうか・・・。
全ての吸血鬼が血を吸うだろうか?
少なくとも僕はそうではない。
何故かって? 今から僕についてお話をするとしよう。
僕の名前は、レイン・アルフレッド。
年は18歳。
仕事は、城に物資を運搬している。
そんなに給料は良くないがそれなりに満足した生活を送っている。
そして僕は吸血鬼と人間の混血だ。
父が吸血鬼なのだが、僕は吸血鬼のような見た目ではない。
僕は、赤髪で青眼だ。
まあ、少し八重歯が尖っている気もするが、別にそこまで目立つわけではない。
ちなみに、聖水・にんにく・銀はどれも触ったり、食べたりできる。
もちろん日光も長時間当たると少し具合が悪くなるが、特に問題は無い。
特に誰かの血を吸いたいとも思ったことは無かった。
あの時までは____
「レイン、今日の配達はなんだい?」
この人は、門番のブライアンだ。
「リンゴです。 今日は、珍しく城の内部に入って渡すだとか・・・」
「そうか、がんばれよ。」
「ありがとうございます。」
===
「ここか、広いな・・・」
声が響く。
「確か係の人がいると聞いたんだけどな・・・」
足音が聞こえる。
「それは・・・リンゴ?」
2階の階段から降りてくる、かわいらしさを残しつつも美しい女性がいる。
「はい、そうです。」
「お一つ頂けるかしら?」
「どうぞ。」
僕は、そのリンゴを女性に渡した。
女性はリンゴを一口かじり、
「おいしい・・・」
と言って、微笑んだ。
何だろう・・・。
血が騒ぐ。
こんな感覚は初めてだ。
彼女に惹きつけられる、香り?だろうか、何なのかは知らないが、
血が騒ぐ。