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アスタリア戦記 慈愛の聖白  作者: 株式会社マイナーゲームス
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一章 揺れぬ忠義 2

ロークェス隊長率いる後続の部隊の到着、そしてシスターと捜索するユーリ。

帝国との戦争の前に同盟内で騒乱が起きている中でユーリは一つの決断をする。

「エルフェルト、セベラ。直ぐに団長たちと合流するわよ」

後ろから彼女たちより上質な装飾がされている甲冑に身を包んだ茶髪で後ろ髪を首元で切りそろえた女騎士、ロークェス・ギルバートが二人に指示を飛ばす。

「レノンの野郎、軽兵だからって一番槍取っていい気になって。本物の騎士の実力を見せてやるわ!」

「エル、相手は山賊じゃないわ。この様子じゃ同じ同盟軍だと思う」

「セベラの言う通り状況を確かめなさい。エルフェルト」

伝令も、大きく交戦した後も無い。衛兵も脱走した同盟兵に不意を突かれたのだろう。

「ロークェス隊長、あそこに同盟兵が」

丘から見下ろした所に背後から一突きされ絶命している壮年の上級騎士の姿が見えた。

三人は遺体の元へ向かう。


「彼の身元が分かる物があれば良いけれど」

「その必要は無いわ。セベラ」 

背後からの奇襲が意味するのは味方の裏切り。後続兵が不意打ちを受けたのなら山賊の仕業なのも理解出来る。上級騎士一人残して誰一人として血を流していないのが何よりの証だ。

「良い、二人とも、これはあなたたちにとって初めての実戦。気を抜かないで」

「分かってますよ。隊長! むしろ山賊以上に腕が鳴るってもんですよ」

「分かってないじゃない。エル。戦場は競技場じゃないの!」

「脱走兵程度、私の槍で薙ぎ払ってやるわ」

「ふざけないで! エルフェルト」

「うっ、申し訳ありません」

ロークェスの怒号にエルフェルトは萎縮する。

「軽んじて、自身や仲間が危険にさらされたらどうするの? 最悪、誰かが死ぬのよ」

そう、今目の前でくたばった上級騎士の男のように……

「隊長がそんなに激昂されるなんてびっくりです」

エルフェルトは目を丸くする。

どうやらまだ自分が怒られた意味を汲み取れていないようだ。

「行くわよ。二人とも」

三人はヘルザ市街へと馬を走らせた。



「ちっ、こいつら。手練れてやがるぜ」

「だから言っただろ。レノン」

「うっせぇ!」

だが、レノンは執拗なまでの攻勢で圧倒している。

対するアベルも相手の先手を取り深手を負わせる。


「化けモンだろ! このおっさん」

そして、二人の後ろで四人を一度に相手する団長ウォルドは最早別次元だ。

「クソ、槍が通らねぇ」

「当然だ。負う責を捨てた者の刃を通す隙があろうものか!」

中盾による鉄壁守りは重騎士に匹敵する。彼の技量によるものが大きい。


「シスター、早く!」

「申し訳ございません。まだ、わたしを必要とする方たちがいますので」

ルチアは青年の手を払い、市街を更に駆けて言った。

「ウォルド、レノンとアベルの支援しつつ敵の掃討に当たってくれ。私はシスターの後を追う」

「お一人でですか?」

「私も無理はするつもりは無い。それに後続の部隊が来る頃だ。……いや、来たか」

「は? ロークェスの部隊との連絡が来ていないのにどうして?」

「外部との連絡手段を絶ってからの略奪。彼らの指揮は確立されている」

ユーリは戦闘の最中でも状況を観察している。

「金品を中心に盗っているところから先の大侵攻の恩賞の件で不満があるのだろう。それにそれぞれ二人一組で徘徊し、特定の場で集まっているようだ」

ヘルザの街は中央の噴水広場を中心に円を描くように築かれた都市だ。

「チーム別れて行動、特定のエリアで合流、合流予定を大幅に遅れれば他のチームが確認に来る訳だ」

今戦闘しているのが確認し来た連中と言うことだ。

「伝令がいない状況だと古典的な方法に頼ることになる」

もしも遠距離で会話が出来るような物が発明されれば戦争は大きく変わるだろう。

「円は六つ、後六人はいるはずだが今の分だと彼女たちと当たっているか? 内側から順に一周しているか……」


「何だ! この女ども強ぇ」

「女だから何? これでも歴とした騎士なんだけど!」

エルフェルトは槍を突き立てながら言う。

「エルに負けてられない」

セベラも負けじと剣を振るう。


「あなたたちの所属を問おうか?」

張りのある声でロークェスが脱走兵三人に駆け寄る。

「くっ、クソ」

「答えぬのなら、散りなさい!」

三人相手に猛然と立ち向かい討つ様はエルフェルトとセベラの憧れである。

「やっぱ、騎士団のナンバーツーは格が違うわ。それに口調も団長に似てるわ」

「言ってる場合?」

こちらの戦闘はまだ継続中。

「しまっ」

「はっ!」

エルフェルトが油断した隙を突き、残りの一人が剣を振り下ろそうとした所に剣が入った。

「大丈夫か? エルフェルト」

「ユーリ様、ありがとうございます。助かりました」

「いや、遠征地へ向かう途中に休息を取らせずに無茶を言ったのは私だ」

ユーリは周囲を眺める。

「ところで、シスターを探しているのだが、見かけなかったか?」

「いえ、見ていません」

「そうか。やはり噴水の方へ……ロークェス、ここが片付いたらウォルドと合流し噴水広場へ向かってくれ」

そろそろ指揮官が異常に気づいた頃だろう。シスターの身が心配だ。

「承知致しました。ユーリ様、ご武運を」

ロークェスは一言だけを言って見送った。

噴水広場へ向かうユーリ、僅かな交戦の中で彼は全てを把握する。

そして指揮官の待つ噴水広場へ向かう。

次回は随時投稿致します。

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