09〜夢想〜
アリスは瞳を開けると暗闇の中にいた。
「此処は何処だ」
アリスは白のアリスに喉元を突き刺されたことを思い出し、すぐさま喉元に手をやったが何処にも外傷はみられらなかった。
「…ない……あれは夢?」
「夢ではない…」
何処からか掠れた男の声が聞こえ、目の前に黒い血を流しながら床に座り込む自分の姿が現れた。そして、その姿を見るアリスの背後には黒い血に染まった剣を持った白のアリスがいた。その時が止まったような光景を見た黒のアリスは言った。
「私…死んだの?差し詰め貴方は死神ってことかしら?」
「…わしは神などという曖昧で願望的な存在ではない、それにお前はまだ死んでいない、死するには早いからな」
「それはどういう意味?」
「話してやろう、時間はたっぷりとまではいかんがあるからな…」
声の主はそういうと語りはじめた。
「アリスというのは幾度とこの世界に現れては消えていった外界の特殊な人間のことをいう……
あるアリスは世界を赤く血に染め上げ、また別のアリスは蒼白の死人の山に埋もれ眠りに就いた……
そして、今、再び君を含む、幾人かのアリスが現れたわけだ」
声の主はそう言い終えると暗闇から一筋の光が広がり、黒のアリスは瞼を閉じた。
「時間だ」
「ちょっと説明になってないけど……」
黒のアリスは再び瞼を開けると目の前には白のアリスがいた。