43〜カラ〜
洞窟の奥にある古びた墓地。
「来た」
アリア、レギオス、ハンプティ・ダンプティは見上げる。
突然、墓地に緑の文字が綴られた紙が舞い散る。
地に落ちた紙は綴られた文字がうねるように伸び出て、絡み合うようにして樹木を形成する。
そして、墓地は木々に埋め尽くされて森となった。
「さて、何処から…」
アリアの視線の端に飛来する矢が見え、アリアは喉元から青い液体を引き出し槍を形象すると飛来する矢を切り落とす。
「この矢は…エリスの」
アリアは二つに切り落ちた矢を見ながら言った。
「そう、彼女はメイトしたのね。そして、アンダープロモーション」
緑の液体が木々の幹から流れ出てる。
流れ出た緑の液体は人の形を為していくと緑の液体のローブを纏う。
「…ア、リ、ア…」
緑の人の形をしたものは弓矢を構える。
「よっと」
何の飾り気のない真っ白な凹凸のない仮面と黒いローブの人物がアリアと緑の人の形をしたものの間に降り立った。
「なんで貴方が」
「やあ、青のアリス」
アリアは真っ白な仮面の人物に青い槍の鋒を向ける。
「それを向ける相手が違うよ」
「間違ってない」
アリアは槍の鋒を近付ける。
真っ白な仮面の人物は両手を肩より上にあげる。
「近い近い…」
突然、緑の人の形をしたものが引き絞っていた矢がアリアと緑の人の形をしたものの間にいた真っ白な仮面の人物に放たれる。
しかし、真っ白な仮面の人物は左手を頭の後ろに落とし、放たれた矢を何のこともないように掴み取る。
「害を与えた覚えはないのにみんな敵意を向けてくるだよね」
真っ白な仮面の人物は掴み取った矢を前に持ってくるとフッと息を吹き掛ける。すると矢は一瞬で消え去る。
「でも、君にだけは敵意を向けられたくはないね」
真っ白な仮面の人物はそう言うと素早く身体を捻り、緑の人の形をしたものの目の前に移動した。
そして、紙の回転式拳銃を緑の人の形をしたものの眼前に構える。
「じゃあ、君も」
真っ白な仮面の人物は紙の回転式拳銃の引き金を引く。
森の木々が一気に紙へと変わり、散って舞い落ちると宙で動きを止める。
「かえるべき所へとかえれ」
真っ白な仮面の人物は後ろへ飛び退く。
すると紙は緑の人の形をしたものへと押し寄せて緑の人の形をしたもの周囲を渦巻き、次第に紙は球体を形成する。
紙の球体は渦巻きながら収縮していき、紙の束となる。
「大人しくリザインしてくれて助かる」
紙の束に緑の装丁が現れると真っ白な仮面の人物は緑の本を手に取る。
「ぞろぞろその槍を収めてほしいのだけど」
「いや」
「はぁ…」
真っ白な仮面の人物は深い溜め息をつく。そして、真っ白な仮面の人物は一歩踏み出す。
「どういうつもりかな?」
しかし、真っ白な仮面の人物は足を動かせなかった。足を覆うように殻が集まり、真っ白な仮面の人物の足の自由を阻害している。
「どうもこうもないぜ」
「君が今やろうとしたことは世界に反することだからね」
「だったら死者の管理くらいきちんとしてほしいのだけど」
真っ白な仮面の人物は緑の本を手で弄びながら言うと突然、手から緑の本が消えて、足を拘束していた殻にヒビが入る。
「もう用は済んだから行くわ」
殻が一気に細かく砕け、視界を曇らせる。
アリアはすぐさま真っ白な仮面の人物がいる場所に槍で横凪ぎするが手応えはなく、視界が晴れただけだった。
「もう此処にはいないね」
ハンプティがそう言うとアリアは槍を喉元に戻し、出口へと歩みを進める。
「もう行くの?」
「アリスの居場所はいいのか?」
アリアは何も言わずに出ていった。
「聞くが、灰色のアリスは盤上には見えないんだな」
レギオスはハンプティ・ダンプティに背を向けながら聞いた。
「今は見えんな」
レギオスも何も言わずに出ていった。
「もう行ったぜ」
ダンプティは独り言のように虚空に言葉を吐き出す。
「気付いてたんだね」
真っ白な仮面の人物が墓石に座っていた。
「まあな、でもな、あいつも気付いてたと思うぜ」
「気付いていて見逃したと?」
「そうだと思うよ」
ハンプティが言った。
「そう」
真っ白な仮面の人物は素っ気の無い返事をする。
「白の器と卵か…」
何の飾り気のない真っ黒な凹凸のない仮面と白いローブの人物が上方の横穴から二人を眺めていた。




