38〜ALICE〜
サファイアのような色合いの濡れた髪に深紅の瞳を持つ女性は金色の髪の美青年に歩み寄っていく。
「説明しろ!」
「お前が知ることは能わず」
女性は金色の髪の美青年にそう言うと手で美青年の胸を突き刺した。
「なっ…にを…」
女性は何かを握り取り、引き抜いた。
「もうお前の役目はあらず」
その瞬間、金色の髪の美青年の身体は色を失い、形状が崩れ去った。
「A Lunar Iliad CorE(月の継脈核)」
女性の手には黒い月の満ち欠けが合わさる金色の球体があった。
「おやおや、それがALICE ORIGINALの金環蝕ですか」
青白い髪に狐目の少年が突然現れ、女性の手から金色の球体を掠め取った。
「どういうつもりだ、リンゼン」
女性は青白い髪に狐目の少年を睨みつけた。
「いえいえ、世界の根幹たる物がどういう物か近くで見てみたいと思いましてね」
リンゼンは金色の球体を投げ返した。
「それでこれからどうするつもりなんです?」
「言う必要は感じず」
「そうですか、ですが他の方々は王の駒が消えたことを感じ取り、もう動き始めていますよ」
女性は手を虚空に翳すと地面の一部が二つに裂け、文字列が立ち上った。
「頭が消えようとも駒は駒に変わらず、盤上から出ることも能わず」
女性はそう言い残し、文字列が立ち上る裂け目に消え、裂け目は閉じた。
「…ということらしいですよ、本物のエぺ・モナルクスさん」
黒いローブに金の仮面で顔を隠した金色の髪の青年が物陰から現れた。
「………」
青年は何も言わなかった。
「本物は寡黙なんですね」
仮面の青年は黒い皮張りに彫金が施されたレリーフの装丁の本を取り出した。
「あれは…」
リンゼンは片目を見開くとすぐさまその場から姿を消した。
仮面の青年は本を開いた。すると柩の隙間から文字列が出て来て本の頁に文字列が刻まれていく。
暫くして文字列が途切れ、本に文字を刻み終えると本を閉じて仕舞った。
そして、手を教会内部の中心に向けた。それから手に小さな黒い球体を作り、教会の中心に放つと物陰に姿を消した。
残された球体は教会内部の中心で燻るように暫く火花を散らすと一気に教会の建物全体を包み込むほど膨れ上がり、すぐさま収縮し空間ごと全てを消し去った。




