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31〜失憶〜
ノワールは失われた記憶の中にいた。
襤褸襤褸の衣服を着た幼きノワールは鞭を打たれ、ほの暗い地下室の床に倒れ込んだ。
「何度言えば分かる!あの扉へは近付くな!」
金色の髪の美しい中年が言い、その隣には頭に鉄の仮面を着け、黒い布で身を隠した性別不明の者が鞭を持って立っていた。
「身動きが取れないよう、重々に鎖で繋いでおけ」
鉄の仮面の者は地下室の壁に掛けられている幾つもの鎖をまとめて取るとノワールの身体に巻き付け、壁から幾つも取り付けられている小さな鉄の輪に通していく。
「どうしてこんなこと……」
幼きノワールは弱々しく呟いた。
鉄の仮面の者はそれに反応することなく鎖を繋ぎ終え、地下室の扉の鍵を掛けて去って行った。
「どこまで行っても人というのは浅ましいものだな」
地下室に何処からか、幼きノワールの耳に声が聞こえた。
「…」
「お前の持つ力ならそんな鎖など容易いだろう?」
「…私にそんな力…」
「有るさ、ないわけがない私の…」
そこから先は声が聞こえなくなった。




