28〜崩壊する仮面〜
講堂では幾つもの長椅子が見るも無残に壊れており、アリアとザムザが対峙していた。
「いきなり何するの」
「アリスコワス…」
三つに裂けている右手を伸ばし、近くにあった長椅子を搦め捕ると半身を捩るようにしてアリアに向かって投げつけた。
するとアリアの前に誰かが立ちはだかり、飛んできた長椅子を蹴り壊した。
「レギオス」
「アリアには、指一本たりとも触れさせん」
「やっぱりもう始まってる」
Kn‐?と刻まれた仮面の上半身から膝くらいまでマントで身を隠した少女、エルヒムが講堂の梁に立っていた。
「ジャマスルナ…」
ザムザは左手で右腕の黒い包帯を右肩まで引き千切った。すると裂け目が肩まで広がり、三つ裂けていた腕の表皮が裂けて新たな腕が現れて腕が三本になった。
ザムザはその三本の右腕を振り翳し、レギオスに向かって跳び上がった。そして、ザムザは三本の右腕を同時に振り下ろした。
レギオスは素早くアリアを抱え、それを躱すと天井の梁近くまで飛び上がり、梁に掴まった。
二人の眼下では石畳を砕く轟音と共に砂埃が舞い上がった。
砂埃が落ち着くと講堂の半分以上をえぐり取るような穴が開いていた。
「なんて力だ」
レギオスは思わず口にした。
「あれで三割も満たない力とは驚きよね」
エルヒムは梁の上から見下ろしながら呟いた。
「主よ、お許し下さい」
ジョーヌは講堂の入り口の陰でそう祈るように呟くと両手の中指の先を十字架の形をした短剣で傷付けた。
指先からは深い緑色の血が溢れ出し、蔦が伸びるように左手に弓を形作り、同じように右手に矢を形作った。
そして、矢を弓に掛けて、入り口の陰から講堂の中を臨むと矢をザムザに向けて射った。
ジョーヌが放った矢はザムザの右肩に突き刺さった。
「面倒掛けるけど、どうやらまだ完全には同気するにはもう少し時間がかかるみたい」
先程、ジョーヌが居た講堂の入り口の陰に隠れながらノワールはノブレスに言った。
「私に言われても、私も傍観者でいることしかできませんから」
ザムザはジョーヌの方を向いた。
「コワス…コワス…コワス…コワス………」
ザムザは呟き続けた。するとザムザの周囲にある地面の破片が小刻み震動し、ザムザの仮面に亀裂が入った。
「やばっ」
エルヒムはそう言うとすぐさま教会から出た。
「何か危険な感じだな」
ザムザの仮面の亀裂がさらに広がり、今にも割れそうな状態になった。
ザムザは前屈みに地面にすべての手を付くと臀部からカタカタと音を立てて、骨が列なる尖端に鋭い尻尾が衣服の下から突き出た。
「主よ、芽吹きの息吹をお与え下さい」
ジョーヌが祈るように呟くとザムザの右肩に突き刺さった矢が幾つも縦に裂けた。そして、蔦のようになり、ザムザの身体を締め付けるように巻き付いていく。
「…グァアアア…」
ザムザが叫び声を上げるとさらに仮面の亀裂が広がり、遂に仮面が砕けた。
そして、ザムザを中心として黒い球体が広がり、教会を包み込んだ。




