25〜迷いの教会〜
アドナは城の敷地内に存在する生け籬の迷路の中央にある教会へとやって来た。
中には祭壇に腰を下ろして待つクリューがいた。
「遅い!何してたの?」
「ビショップにシャンクの居場所を尋ねられた」
「いないと思ったらまた勝手に動いたのね」
「それと……」
アドナはクリューの前に何かを放り投げた。
「にゃう!」
「チェシャ猫?」
「俺の後を付けてたんでな」
「へぇぇ〜」
クリューは脚を振り上げ、祭壇から下りてチェシャ猫に歩み寄った。
「王の飼い猫が何の用?」
「にゃんにもないにゃん」
「そう、だったらあの王に直接…」
「にゃ…」
「にゃ?やっぱりあの王、私達のことを疑っているようね」
クリューはチェシャ猫の反応を見て感づいた。
「お前が明白な態度を取るからだろう」
「嫌いなものを嫌いと言って何が悪いの?」
チェシャ猫はそうっと出口に歩みを進めようとしていた。
「何処に行くつもり?」
クリューはいつの間にかチェシャの前にいて、行く手を塞いでいた。
「いやぁちょっと…にゃははは…」
チェシャ猫は苦笑いをした。
「この猫、殺していい?」
クリューは仮面の奥から怖い目をして剣の柄に手を掛けた。
「まっ待つにゃ、話すから待つにゃ」
「弱者なんだから初めから素直に言えばいいのよ」
クリューは剣から手を外し、表情が元に戻った。
「後を付けたのは不穏にゃ行動をしている者がいにゃいか調べる為にゃ」
「そう…だったら不味いわね、だって私達、不穏な行動をしてるから」
クリューは悪びれる様子もなく言った。
「にゃにゃにを…」
「からかうのはその位にしておけ」
「これから面白くなってくる所なのに」
「もう出ていって構わんぞ」
アドナがチェシャ猫にそう言うとチェシャ猫はすぐさま教会から出て行った。
「何処へ行く?」
クリューは教会の出口に歩みを進めた。
「面倒だけど、シャンクを探してくる」
「そうか、しかし、お前が自ら動くとは珍しいな」
「仕方がないでしょ、今はあの人とも無闇に連絡は取れないんだから」
クリューは教会から出て行った。




