2/52
02〜ウェルズの森〜
昼間でも薄暗い森の中、アリスは森の奥へと歩みを進めて行った。
「完全に見失った」
アリスの前にチェシャ猫のギラリと光る二つの黄色い瞳と頬まで裂けた大きな口が木の枝元に現れ、にやりと笑いながら言った。
「さがしものかにゃ?」
「何ってどうせ見てただから知っているんでしょ?」
「見てたようにゃ、見てないようにゃ」
「てか、こんなやり取り前にもなかった?」
「あったかにゃ、どうだったかにゃ…」
チェシャ猫は曖昧な言葉を残しながら消えていった。するとそこに掌より大きな懐中時計を腰からぶら下げ、白いウサギの耳が頭から生えた少年が現れた。
「丁度良い、あのウサギに聞いてみよう」
アリスは白ウサギに話し掛けたが…
「急がなきゃ…急がなきゃ…時間がない…」
…白ウサギはそう呟きながらアリスの前を走り去って行った。
「ちょっと待ちなさいよ!」
アリスは話を聞かずに走り去った白ウサギの後を追い掛けた。
「行き止まり?」
アリスは木々が犇めく袋小路のような場所に着いた。