14〜三人目のアリス〜
ノワールとチェシャ猫は森の中を歩いていると突然、木々の合間から目の前にルージュが現れた。
「こんな所で会えるなんてついていますわ」
「誰だか知らないけど何の用?」
「忘れたの?会うのは初めてじゃないわよ、まあ、あの醜い姿から比べれば無理はないけど」
「何を言っているの?」
「ハートの女王だにゃ」
チェシャ猫は小さな声でノワールに言った。
「あの女王?見た目は確かに違うけど心中から滲み出る臭いは一緒ね」
「言ってくれるわね」
ルージュは斧を取り出し、いきなり振るってきた。ノワールとチェシャ猫はそれを躱すとノワールは大鎌を構えた。
「何をするにゃ」
「ちょっとした挨拶よ」
ルージュは斧を納めた。
「またの機会に会いましょう」
「待ちなさい!」
ルージュは後ろに振り返るとノワールは大鎌を振い、喉元で止めた。
「何か?」
「何か?じゃないわよ、いきなり斧を振るっておいて何もなしで済ますつもり?」
「そうね、では一つ、この森に住む少女には気をつけることね」
そういうとルージュは素早く身を屈めて地面に手をつき、大鎌の刃を蹴り上げた。
ノワールは体勢を崩してのけ反ったが、すぐに体勢を戻す。しかし、そこにはもうルージュの姿はなかった。
「逃げられたみたいね」
「その内また会えるにゃ」
「何でそんなことが分かるのよ」
「彼女もアリスの一人だからにゃ、赤のアリス、その名の通りの歩いた後には鮮血の跡が残るにゃ」
「一体、何人いるのよ」
ノワールはそうぼやくとチェシャ猫が答えた。
「僕が知っているにゃかではあと二人にゃ」
「知っている中ではってことはその他にもあんな奴がいるのね、面倒ね」
「残りの二人は君達三人に比べたら穏やかな方だと思うにゃ」
「残り二人がどんな奴か知っているの?」
「もちろんにゃ、さっき赤のアリスが言ってたにゃろ?」
「たしか、この森に住む少女には気をつけろとか言ってたわね」
「この森にアリスが一人いるにゃ」
「じゃあ、案内なさい」
「でも…」
「確認しておいて問題はないでしょ?」
「分かったにゃ」
チェシャ猫に案内され、ノワールはウェルズの森にいるアリスの元へ向かった。




