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色彩  作者: よろず
3/24

3

 赤いランドセルを背負った女の子が、ぐずぐずと泣きながら歩いている。

 小学校に入ってからしばらくは問題無かった。だけれど四年生になって、桃はクラスの女の子達に嫌われてしまったようだ。

 クラスの女子のリーダー的存在の子が好きな、クラスの男子。その男の子が桃を好きらしい。

 それだけの理由で、桃は今日、そのグループの子達に意地悪をされた。


「桃!」


 泣きながら歩く桃の後ろから、ピンクのランドセルの少女が駆け寄って来た。一年生の時から去年まで、同じクラスで仲の良かった立花里香。可愛く快活な彼女は、クラスの男子達のマドンナ的存在だった。


「意地悪されたんだって?大丈夫?」

「なんで、知って、んの?」


 泣きながら、尋ねる桃に里香は笑顔を向ける。


「教室から泣いてる桃を見かけてね、桃のクラスの子に聞きに行ったの。意地悪した子達、お説教して懲らしめた!だから泣かないで?」


 優しく笑って頭を撫でられ、桃は里香に縋り付いて泣いた。

 それから桃は里香とずっと一緒にいる。大切な、桃の親友だ。


「里香ちゃん、おっはよぅ!」


 高校を選ぶ時、桃は里香と同じ学校に行く為に勉強を頑張った。

 勉強が出来る里香は、当時の桃には難しい高校を志望しており、親に頼み込んで塾も通ったのだ。そのお陰で桃は今もこうして、里香と一緒に登校する事が出来ている。


「おはよう。今日はね、幸せなやつだったよ!」


 毎朝の里香の夢報告。これは二人の日課になっている。

 茜と虎様。着物姿の二人の夢。まるで御伽噺のようで、桃はこの話を聞くのが好きだった。ただ、悲しい内容の時は、落ち込む里香が心配になる。


「今日はどんなの?」


 幸せな内容の時は機嫌が良くなる里香。今日はそちらだったんだと安心して、桃は内容を尋ねた。


「虎様が馬で城下に連れて行ってくれたの!虎様の前に横抱きで乗せてもらってね、とっても嬉しくてドキドキしちゃった!」

「それってデートかな?」

「そうかも!」


 里香は夢の中の男に恋をしているのだと桃は考えている。

 学校で、人気者の男子に告白されたとしても靡かない里香。里香にとって、夢の中の虎様という存在はとても大きな物なのだと桃は知っている。だが夢は夢。夢にばかり囚われず、里香が現実で幸せになってくれたら良いと、桃は願う。

 なにはともあれ、まだ二人は高校二年生。十月も終わりが近付き、今年も後二ヶ月で終わる。来年は三年生になるが、まだ恋愛を焦ってするような年でもない。

 今はまだ、里香も桃もお互いに、友人と楽しんでいたいのだと考えていた。


「そういえばさ、新宿に新しいショッピングモール出来たんだって!」


 昼休み、お弁当を食べながら桃はニュースで紹介されていた内容の話をする。

 明日は土曜日で学校は休みだ。混んではいるだろうが、ニュースで紹介されていたスイーツを桃は食べてみたいと思った。


「私もそこ行きたいんだよね!エクレアのお店。美味しそうじゃない?」

「それ!私も食べたいの。明日行かない?」


 里香も同じ店に興味があったようで、桃は嬉しくなる。

 ニュースで見た店の内容の話をして、明日は二人で新宿へ繰り出す事で話は決まった。

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