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色彩  作者: よろず


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 きっかけは裕貴の一言だった。


「来週遥くん誕生日だけど、立花さんって誕生日いつ?」


 放課後の遥のバイトが無い日、いつものように四人で遊びに出掛けた先で、裕貴は突然思い付いたようだ。

 この日四人が来たのはボーリング場。二レーン使用して、遥と里香、裕貴と桃でペアを組んで合計スコアを競っている。


「里香ちゃんも来週だよね?」


 桃に視線を向けられ、里香は頷いた。

 ある可能性が思い浮かび、里香は目を丸くして遥を見る。


「俺は11月18日。」

「私も、11月18日です。」

「もしかしたらその日が、景虎と茜が死んだ日なのかもな。」


 里香も遥も、夢に見る出来事については知っているが、細かい日付や西暦などは知らないのだ。

 遥はその中のちょっとした情報で、大体の時代や地域の予測を付けてはいる。里香はそういう事を考えた事がない為に、全くわかっていなかった。


「うっそ。そこまで来るとすげぇな。」

「ほんと。神様の悪戯?」


 裕貴と桃も驚きに固まり、里香と遥は顔を見合わせて苦笑する。

 同じ日に死んだ二人が同じ誕生日。運命という言葉が四人の頭を掠めてしまうのも、無理はない。


「こりゃあダブルバースデーやるしかねぇな!立花さん、家でなんかやんの?」

「うちは、ケーキ食べるくらいです。」

「なら遥くんの家でダブルバースデーしよう!」

「なんで俺の家?」

「片付いてそうだから!」


 そうして決まった誕生日会。里香と遥は、当日までに恋人への誕生日プレゼントに頭を悩ませる事になるのだった。




 学校が終わり、里香と桃は駅へと自転車を走らせる。電車に乗って向かうのは、遥のアパートの最寄り駅だ。

 11月18日。遥と里香の誕生日。里香の両親には遥の家で誕生日会をすると伝え、プレゼントも里香の鞄の中に入っている。喜んでくれるだろうかとそわそわした。


「やほー!」


 電車を降りて改札を通り抜けた先には、遥と裕貴が待っていた。

 これから料理とケーキを買いに行く予定だ。


「そんじゃあ二手に別れましょ。」

「それって…やっぱり私が裕貴さんとですかぁ?」

「もち!桃ちゃんそんな顔しないで。ケーキ取りに行くだけだから!」


 桃は裕貴を嫌がるが、彼が無理矢理何かをするという事はない為に、桃の中での警戒レベルは大分下がってはいる。それでも二人きりに抵抗のある桃は、裕貴に引き摺られるようにして連行された。

 そんな二人を見送る里香は、裕貴の意図を遥から聞かされた為に、何処まで阻止したら良い物か考えあぐねている。悩む内に桃は連れ攫われ、里香は心の中で桃に詫びた。


「おいで、里香。」

「はい。」


 遥が差し出した手を取り、里香は遥の隣に並ぶ。二人はこれからチキンのセットを買いに行く。飲み物は既に買って家に置いてあるのだと、遥は里香に説明した。


「桃、大丈夫でしょうか?」

「……裕貴は、嫌がる相手をどうこうする奴では、ないみたいだ。」


 これが、毎日のように裕貴と行動していた遥が出した答えだった。確かに言動は軽いが、周りの調和に気を配り、人を気遣えるのが裕貴という男だ。最近では、結構良い奴かもしれないなと遥は思うようになっていた。

 遥がそう言うならば信じてみようと里香は頷き、だが、桃が助けを求めた時にすぐにわかるようにスマホを鞄からブレザーのポケットに移動しておいた。



 買い物した物を持って向かった遥の部屋は、あまり物が無くすっきりとしていた。

 1Kのアパートで、布団は畳んで隅に追いやられている。

 里香と遥のすぐ後に桃と裕貴も到着して、温かい内にと食事を始めた。


「これはねぇ、俺と桃ちゃんから二人にプレゼント。」


 弘樹がそう言って里香と遥に差し出して来た袋には、お揃いの手袋が入っていた。

 二人にお礼を言って、里香も遥へのプレゼントを渡す。


「早速使う。ありがとう。」


 ベルトの穴にぶら下げられる革製のキーホルダー。

 嬉しそうに笑った遥は、今まで使っていた古い物から鍵を付け替えた。

 そして里香にも箱を手渡す。


「宝石箱?」


 茶色い木製の宝石箱。開けてみたら、アクセサリー入れにもなるオルゴールだった。


「この曲は?」


 ネジを回して流れた曲に首を傾げた里香に、遥は微笑み掛ける。


「リストの、"愛の夢"。ぴったりかなって。」

「ぴったりです。ありがとうございます。」


 オルゴールの曲を流しながら、四人でケーキを頬張る。

 夢の中で見る悲しい出来事も、こうやって、楽しい思い出へと塗り替えてゆく。

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