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一話 帰還



 天界てんかい

 雲よりも高く、空よりも低い位置にある人知らずの地。

 神が創りし天上の世界。神が治め、天使や精霊が生活を共にする。そこでは自然物が大多数を占める。自然を大事に、ではない。共生している光景だ。手を加えられアートのようにしてある樹木もあれば人と共に散歩している動物もいる。誰もが笑顔で幸せそう。ここを楽園と紹介しても疑う者はいないだろう。

 だがそれは地上の者たちではおよそ信じられないような光景であった。白を基調とした石造りの神殿や家々。そこへ通ずる白い石畳。そしてその周りに広がる白い地面。白い土。白い植物。白い毛並みの動物たち。色調に多少の差はあれど、そこに生ける者たちは、そこに築かれた物たちはまんべんなく否応なくどうしようもなく白い。瞳や毛髪、毛並みのコントラストに他の色が混じって入るが、それでも『白い』という衝撃は脳内に焼きつけられてしまう。そん

な光景だった。

 天界は今日も神々しいほどの白さに溢れていた。

 そんな白を輝かせる朝日が今日も天界を染め上げる。

 天界でも唯一の入り口・天国の門の前に、スカイは立っていた。悪魔の討伐という自らの任務を完了し、報告するために戻ってきたのだ。この職についてから随分と経つ。ここまでの流れも慣れたものだ。なんのことはない、いつもと同じ日常だった。ただ殺し、戻る。それだけの仕事だ。

「天界直属清浄組織・天精てんしょう機関。異界強攻執行部、高等執行官、スカイ。神よりの勅――悪魔討伐の任をあけて帰還した。門を解き放ち、我が身を受け入れる許しを請う」

 門を見上げ、高く言い放つ。

 端に立つ門番が同時に頷き、手に持つ槍の柄を地面に叩きつけた。

 ゴゴゴゴゴという重厚な音と共に門が開いていく。それは耳に響くというよりは身体の奥底を連打される感覚だった。

 厳かに開いた門をくぐり、天界の中へと足を踏み入れる。



「スカイくぅん!」

 一番広い表通りを進んでいると、同い年ほどの少女が駆けてきた。無邪気に弾ける笑顔が印象的な少女だった。緩いウェーブのかかった髪が楽しそうに揺れていた。

「やあ、メイナ。ただいま」

「おかえり。今回は早かったのね」

 スカイの前まで来るとぴょこんと跳ねるように止まった。ほどなく再開したスカイの歩調に合わせる。

「確かに早かったかもしれないけど、壮絶だったよ。あれほど頭の切れる悪魔はそうそういない」

「へえ。それをこんなに短時間で仕留めてきたんだ。さすがは天上に名を轟かす高等執行官の若きエース様だね。幼馴染の私も鼻が高いよ」

 メイナは自分のことのように笑った。スカイの名声が素直に嬉しいようだった。

「メイナはいつもそう甘やかすね」

「スカイ君は自分に厳しいんだよ。少しは労った方がいいよ」

「ありがとう。メイナの方はどう? 恋のキューピッドは順調かい」

「ああ、そっちはね……」

 不意にメイナのスピードが遅れる。そしてどこか過去を見つめるように視線を上げた。

「落第しちゃった。また今度挑戦してみるよッ」

 残念な話をしているのに、彼女は笑顔だった。声にも明るさが見てとれる。だがそれが、かえって彼女の中の闇を濃くしているように思える。

 質問をしておいて、スカイはしまったと思った。以前からわかっていることだった。彼女の成績はあまり好ましくないということを。

「もう何度目だろう」

 ボソッとつぶやき、彼女は再び歩き始めた。




 お久しぶりです。

 前回アップしてから随分と時間が経ってしまいましたが、これから続けていきます。

 だがしかし。

 かなりマイペースなスパンを空けての投稿となることが予想されるため、まぁのんびりとよろしくお願いいたします。

 好きに書く予定ですがあなたのお気に召す作品となれば幸いです。



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