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プロローグ.呪い

 白刃が彼の身体からだを貫いた。

 真っ黒な血が剣をつたって指に絡まる。そのまま地面にしたたり、粘着質な音をたてた。

 空も地面も灰色な世界に、人影は二つきり。一方の腹部に刃を突き立てているのは、顔にまだ幼さの残る青年だった。

「これで終わりと思うなよ」

 痛みに苦しみながら、それでも男は笑っていた。そして血のべっとりついた手で、少年の頬を撫でた。

 まるで戦化粧のように黒くなる肌。その顔に浮かぶ眼光は、刃同様に男を貫いていた。が、その目がわずかに歪む。

「なにを、した」

「ふん、呪いだ」

「呪い……?」

 手を払った少年に、男は笑いながら告げた。痛みに耐えるでもなく、むしろ清涼感のある口調だ。

「黒魔術は悪魔の専売特許だ。お前はすでに呪われている。これから未来さき、まともでいられると思うなよ」

 男は天を仰いで笑った。それは世界中にも天空にも響くかのような高笑いだった。死の間際でなおこのようなたち振る舞いができるのは、この男が悪魔だからか。それとも――。

 少年は刃を抜いた。腹部にぽっかりとあいた穴から血が吹き出る。それもすべてが黒かった。

 力なく立っていた男は剣という支えを失い倒れていく。高笑いを続けながら倒れる姿を、少年は時がゆっくり流れているように感じた。

 地面に身体を叩きつけ、仰向けに横たわる男。その声はすでに枯れていた。もう音など一つも聞こえてこない。静寂があたりを包んだ。

 なのに。

 なのに、どうして。

 少年の頭の中には男の最期の言葉と笑い声が、いつまでもいつまでも響き続けていた。




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