始まり
「陛下、国王陛下っ」
国王陛下ののお気に入りの一番隊隊長、ティール・スプラウトはユース・ウォーカー国王陛下を探していた。
―――――バンッ
「陛下っ」
「…なんじゃ、騒がしい」
ユース国王がそう言うと、ティールは息を弾ませて。
「反乱軍にっ、国王軍がおされていますっ」
それを聞くと、ユース国王は少し驚いたような表情をしたが、すぐに、やはりそうかとでも言うような顔つきになった。
「ティール、頼みがある」
「はっ、何なりと」
ユース国王は、少しためらったようにも見えたが、すぐに決心すると。
「私の娘、レイラを連れてここから逃げてくれ」
ティールは驚きすぎて言葉を失った。
自分の耳さえも疑った。
「い、今…何と…」
「レイラを連れて逃げてくれ。と言ったのだ」
ティールはさらに驚いたが、なぜそんなことを言うのか。
「なぜですか!?でしたら国王陛下もお逃げ下さいっ」
自分が何を言っているのかわかってはいたが、こればかりは譲れないといった様子で精いっぱいの反論をした。
「ティール、こんな私でも国王は国王じゃ。それに、反乱軍が狙っておるのは私の命。私と共に逃げれば、レイラの命も危うい。お前しかおらんのだよ、私が心から信頼できる者は」
ユース国王は悲しそうに言うと、さらに「頼むよ…ティール」と言った。
ティールは困惑したが、決心をした。
「わかりました。レイラ様は私の命に代えてもお守りいたします」
ティールがそう言うと、ユース国王は涙を流し、「ありがとう」と言った。
その後、大切な人の命を奪う大反乱は終結し、ユース国王は亡くなった。