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とある密談

 王城の奥まったところにある、国王の私室にて。

 薄暗い明かりに照らされて向き合う、二つの人影があった。


「随分、強引に話を進めたな」

「黙れ、爺」


 一つは、灯火を弾いて朱を帯びた金色に輝く髪を持つ青年。

 もう一つは、この部屋の主である国王ルーファスである。

 この光景を見る者があったら、こんな事を思うだろう。どことなく似通った面立ちを持つ二人である、と。

 呆れたように言った相手に対して、ルーファスは穏やかさや優雅さの欠片もないぶっきらぼうな声音で短く呟く。

 彼が向ける翠の視線には、苛立ちにも似た光が宿っていて。表情は、どこか不貞腐れたようにも見えるものだった。


「あの子は優秀だったから、今後を期待して送りだしたのに。まさか、その日に持っていかれるなんて」

「それなら、出さなきゃよかっただろう」


 苦い表情で言いながら告げるルーファスに、相手はやれやれと言った風に肩を竦める。


「彼女はそれを望んでいなかった。それに、塔を出なければ安全ではあるが、始まりも終わりもしない」


 溜息交じりに告げられた謎かけめいた言葉に、ルーファスは無言だった。

 彼とて分かっている。

 彼女は守られていた場所を出て独り立ちするのを望んで、その為に頑張っていた。

 そのまま、夢を追わせてやれならどれ程良かっただろう。

 だが、状況がそれを許してくれない。

 かつてと全く違う道を歩んでいたはずの彼女を絡め取ろうと、因果は巡り収束しようとしていた。

 朱金の髪の青年は、深い翠の眼差しを国王に向けた。

 心の内を見透かすような真っすぐで鋭い瞳を、ルーファスは真っ向から受け止める。


「やり直せるのは一回きり。お前はただ一つの札を既に切っている」

「わかっている」


 告げられた言葉は、何かの託宣のようにも響いた。

 一から意味を説明せずとも、ルーファスには相手が何を伝えようとしているのか、痛い程に分かっている。

 目の前の男は言っているのだ――同じ事を繰り返すな、と。

 それならいい、と言って相手は踵を返す。

 衣を揺らして身を翻したと思った瞬間……朱金の髪の青年の姿は、国王の私室から影も形もなく消えてしまっていた。

 残されたのは、物思いの表情にて口を閉ざしたルーファス一人。

一つ、息を零して。耳に片方だけ留まるピアスに触れたルーファスは、言い聞かせるようにも、呼び掛けるようにも聞こえる声音で独白した。


「私はもう同じ間違いを繰り返さない。今度こそ……今度こそ、君を守ってみせる……」


 あまりに切ない響きを帯びた決意の言の葉は、誰に向けられたものであったのか。

 それを答える者は、誰もいなかった……。



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