74話、アヴァロンの試練2
ランク制度はゲームからインスピレーション受けて作っています
ランク昇格試験の準備を整えたアーサーは、団員たちを招集した。
「え一諸事情で例年より早いが、ランク昇格試験を行う。お前たちは二人一組、計三つのペアに分かれて各地のポイントに配置された試験官と戦ってもらう」
アーサーはアヴァロンの地図を取り出して木に張り付けた。
「試験官に実力を認められれば、合格スタンプがもらえる。それを持って島中央の拠点にいるマーリンの元へ辿り着けば合格だ。試験官は俺とアリア、そして今回は、囚人更生プログラムの事情で参加出来ないフリードを特別に試験官補佐として立たせる。つまり、俺たちを打ち負かせば文句なしで合格ってことだ」
「団長 ペア分けはどうなっているんですか?」
サリーが挙手して質問するとアーサーは言い放った。
「あーなんかめんどくさいから俺の独断と偏見で決めさせてもらった」
(それって要するに適当に選んだだけなのでは……)
団員たち全員、胸中でアーサーに突っ込んだ。
「もちろん、試験官である私たちが流石に本気を出すわけにもいかないから、それぞれ制限つけた状態で手加減してお前たちと当たる。私は稽古用の槍で、フリードは星魔法使用せず素手で、団長はある一定範囲から出ない状態でお前たちの力量を図る」
隣にいたアリアが説明の補足をする。
そしてアリアに続くようにフリードも補足をする。
「だが制限しても俺たちはお前たちを甘やかさないから覚悟しろ」
「お父さん、ランク昇格試験ってなに?」
イスカが無垢な眼差しで、父であるアーサーを見上げて尋ねる。
「ああそうか、イスカはまだ知らないのか。お前たちが生まれ持つ『レベル』が魂の成熟度を表すものだとしたら、『ランク』は社会における信用や実績の証だ。ギルドや騎士団に入団した時点でのレベルを見てから最初のランクが決まるんだ」
「……ということは、俺やサリーが入団した時には、もうランクが決まっていたってこと?」
エドラが横から疑問を投げかけた。
「その通りだ。例えば、お前とサリーが入団した時のレベルが10なら新人を指す『アイアン』ランクから始まる。だが、クエストをこなせば必然的にレベルも上がっていく。だからこうして定期的に試験を行って、実力に見合ったランクに更新している」
アーサーはさらに言葉を継いだ。
「ランクは下からアイアン、ブロンズ、シルバー、ゴールド、プラチナ、ダイヤモンド、そして最高位のオリハルコンの順で上がっていく。試験での立ち回りと本人のレベル次第では、アイアンからゴールドまで一気に飛び級することもあるだろう」
そこで一度言葉を切り、アーサーは表情を引き締める。
「ただし、今回の試験で昇格できるのはゴールドまでだ。プラチナ以上のランクを目指すならまた別の厳しい試験を受けてもらうことになるからな!」
「ちなみに団長のランクはどこまで行ってる?」
アーサーのランクがどこまで行っているのかエドラは確認する。
「そうだな、魔王を倒したからオリハルコンくらいか」
最高位のランクにアーサーが立っていることを聞いたエドラは、
「面白れぇ!ゴールが分かりやすくて助かる!」
勇者になる明確なゴールが見えたことでエドラの中で熱い情熱が滾る。
「このランク昇格試験は、魂の成熟度――つまりレベルが安定し始める15歳以上が受験資格だ。だからイスカ、お前はマーリンの手伝いをしてやってくれ」
「うん!」
父の言葉に、誰のイスカは健気に、元気よく返事をした。
「では、ペア分けを発表する。エドラ&サリー、スノウ&アクア、エリー&ヴァイル!以上の3組は、各地に用意されたポイントへ向かい、そこで待ち構える試験官と戦ってもらう」
アーサーの説明が終わると、団員たちはそれぞれペアの相手と合流した。
「試験でも幼馴染のお前と一緒だと、逆に安心するぜ」
エドラの何気ない一言に、サリーの頬がカッと熱くなる。
(うぅ……この前の祭りで会ったエヴァさんのせいで、こいつの言葉に変に反応しちゃうじゃない!)
サリーは心の中で悪態をつきながら、火照る顔を隠すようにそっぽを向いた。
(はわわわわわ!神様! アーサー様! スノウさんと組ませていただいてありがとうございます!本当にありがとうございます……)
アクアは心中でこれ以上ないほど激しく祈りを捧げていた。
「俺達は魔法の属性相性がいいからな。力を合わせて、絶対この試験に勝つぞ」
そんなアクアの心境など露ほども知らないスノウが、気軽に声をかける。
「は、はいい!」
あまりの眩しさにアクアは裏返った声で返事をするのが精一杯だった。
「……なんで、受付のお前が試験を受けてるんだ?」
隣でやる気満々に拳を握るエリーを横目に、ヴァイルが不可解そうに問いかけた。
「なんでって、そりゃあ騎士団やギルドに所属する者全員が対象なら受付も対象に決まってるじゃない!」
ヴァイルの疑問に、エリーは当然と言わんばかりにあっさりと答える。
「それに、私だっていつまでも『シルバー』のままじゃいられないんだからね!」
鼻息荒く宣言する彼女に、ヴァイルは「・・・・・・そうかよ」と短く返すのが精一杯だった。
「団長、囚人更生プログラムの制約がある俺を試験官補佐に選んで本当によかったのですか?試験官ならマーリンさんの方が相応しいでしょう」
自分のような立場が選ばれたことに納得のいかないフリードはアーサーの真意を問う。
「マーリンの奴は確かに強力な魔法使いだが、どちらかと言えば補助や回復が専門だ。実戦形式の試験なら、レベル33の副団長クラスであるお前を立たせた方があいつらのためになると判断しただけさ」
「ですが、プログラムの監視下にある俺をいきなり試験官に据えたと知れば騎士団本部が黙っていないはず....」
「安心しろ。ここは絶海の孤島だ。本部にはバレなきゃ問題ないさ」
アーサーは悪びれる様子もなく、カラリと言ってのけた。
「フリード、団長に何を言っても無駄だ。諦めろ」
アーサーの性格を熟知しているアリアが、同情を込めてフリードの肩をそっと叩いた。
「さてと!俺たちは先に試験会場で待機している。準備ができ次第、いつでもかかってこい!」
アーサーの豪快な号令と共に、アリアとフリードもそれぞれの持ち場へと飛び去った。
残された団員たちの間に、心地よい緊張感が走る。
「よし!俺が一番乗りで合格してやるぜ!」
他の参加者が気圧されているのを余所に、エドラはいの一番に駆け出した。
土煙を上げながら、迷いのない足取りて試験場へと突っ走っていく。
「ちょっと、エドラ! 待ちなさいってば!」
慌ててその後を追いかけるサリー。
「待て!抜け駆けは許さないそ、エドラ!」
負けじと声を張り上げてスノウも風を切って走り出した。
「ス、スノウさん! 待ってください〜っ!」
その後ろをアクアが戸惑いながら、それでいてとどこか幸せそうな顔で追いかけていく。
「じゃあ私たちも行くわよ。ヴァイル」
「ああ、そうだな」
2組の騒がしい背中を見送ってからエリーとヴァイルも静かな足取りで目的地へと動き出した。
こうして、アヴァロンの各地を舞台にしたランク昇格試験が幕を開けた。




