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勇者の弟子  作者: ヤス
遠き日の回顧夢
30/96

30話、遠き日の回顧夢1

前話で心に傷を負ったアリアを救済させる為とこの後の展開の伏線を撒くのでいったん物語を現代からアーサーが魔王を倒した後の過去編を挟みます。

物語はソロモン教団による『天上の梯子』事件解決後から、アーサーが魔王ルシファーを討伐した20年前に遡る。


当時15歳だったアーサーは同じく15歳のランスロット、ガラハッド、ナタリア、アレイスターらと共に、魔王ルシファーとの死闘を繰り広げていた。


絶大な実力差の前に両者は拮抗し、互いに満身創痍となっていた。


その激戦の最中、アーサーは仲間たちとの連携でルシファーの真上に飛び上がり、拳で頭部を掴むとそのまま地上へ押し倒した。


ルシファーに反撃の隙を与える間もなく、アーサーは顔面を拳で力強く、何度も何度も殴打し続け、ついにその動きが完全に止まるまで殴り抜いた。


「うおおおおおお」


女神カリヴァから授かった魔王を倒す唯一の聖剣を抜かず、彼は拳だけでルシファーを殴殺したのだ。


「アーサー、もういい」


魔法使いアレイスターは、死体となったルシファーをなおも殴打し続けるアーサーの腕を掴み、力ずくで引き剥がした。


アレイスターは長い錫杖を掲げ詠唱するとルシファーの亡骸に豪炎の球を押し付け、塵一つ残らぬほどの火力で火葬した。


こうしてアーサー一行は魔王に勝利し、魔王軍の戦意を徹底的に喪失させた。


魔王討伐の報を聞いた王家は、すぐさま帰りの交通手段を用意させた。


彼らは半年かけて国に帰郷する。


城の大広間では、アーサー一行への労いと勝利を祝福する祝賀会が開かれた。


大広間のバルコニーで、五人は賑わう宴を眺めながら語り合っていた。


「俺たちの旅も、これで終わりなんだな……」


ランスロットが寂しそうに呟く。


「いろいろあったが、今思えばなかなか楽しかったぜ」


寂しそうに呟くランスロットの肩にガラハッドが手を回す。


「お前たちのお守りからようやく解放されると思うと、私はわくわくしているぞ」


ナタリアが、明るい笑顔で皮肉を言う。


「俺たちじゃなくて、アーサーのお守りの間違いだろ」


アレイスターが同調すると、アーサーは即座に突っかかる。


「てめーも十分問題児だろうが!」


ナタリアは前に出て振り返り、四人を見据える。


「さて、お前達はこれからどうする? 私は役目を終えたから、また騎士団に復帰する」


「俺は、国の褒美で大手ギルド『リノブレイカー』に紹介されたから入団する」


国の褒美で内定が決まったガラハッドは、高らかに語った。


「みんな、驚くなよ……。俺、旅先で知り合った町の酒場で働くエレナと結婚することにしたんだ!」


恐る恐る手を上げて告白するランスロットに、周囲は騒然とする。


「真面目な顔をしといて、お前も隅に置けないな」


「こういう真面目君に限って、案外ムッツリスケベだったりすんだよ」


アレイスターとアーサーが皮肉でランスロットをいじる。


「うるさい!だから、俺もエレナの為に働くから、国の褒美として紹介された大手ギルド『ホワイトベア』に入団する」


「おお!そうなると、今度はお互いライバルになるな!ランスロット」


「出来れば友達のお前とは戦いたくないな、ガラハッド」


「して、アーサーとアレイスターはどうするのだ?安定した職に就くのなら、国の褒美で紹介された騎士団か大手ギルドへの入団があるのだが……」


ナタリアはアーサーとアレイスターに視線を向けた。


「「旅を続ける」」


ナタリアの問いに二人は同時にそして同じ返答をした。


「テメー、なに人の行動パクってんだ!」


「オマエこそ、何パクってんだ殺すぞ!」


互いに同じ答えをしたアーサーとアレイスターは、顔を見合わせて激しくいがみ合った。


「まさか勝利の宴でも最後の最後でコイツらが喧嘩するとはな」


「やれやれ」


いつもの光景に、ランスロットとガラハッドは呆れてため息をつく。


ナタリアは「ハァ」と一つため息を零し、腰の棍棒で二人の頭部をど突いて黙らせた。


「俺は魔法を更に研究して世に役立てたい! 魔法を勉強するため旅に出る」


アレイスターは頭を摩りながら旅の目的を語る。


「俺は……きれいごとなしで本心をお前たちに告白する。魔王と戦ったあの時、生きるか死ぬかのギリギリを掛けた戦いに俺は興奮していた。魔王のような強い奴ともっと戦いたいって思えたんだ。さらなる強い奴を求めて、それで旅に出ようと思うんだ」


頭を摩りながら本音を語るアーサーに、仲間たちは笑みを浮かべる。


「ホントアーサーらしいな」


「逆に自由でいいなお前」


「まあ騎士団やギルドに収まるような器じゃないのがある意味勇者らしいというか」


「これからは勇者の肩書きのない浮浪者になるんだなお前は」


ナタリアとアレイスターは笑みを浮かべて皮肉を言う。


お祝いの宴は三日間続いた。


魔王討伐から一月後の早朝、城門付近でアーサーは荷物を抱えていた。


アーサーの門出を見送りに住民の姿はなく、共に旅をしたランスロット、ガラハッド、ナタリア、アレイスターの四人が集まっていた。


「てっきりテメーと一緒に出るのかと思った」


「オマエと一緒に旅立ったら幸先悪い気してな」


「それはこっちのセリフだろ」


互いにフッと苦笑し、軽口をたたき合う。


「たまには帰って来いよ、アーサー」


「お前の土産、楽しみにしてるからな」


ランスロット、ガラハッドはアーサーの門出を祝う。


「アーサー、問題を起こして騎士団に捕まるなよ。貴様が捕まったら、騎士団所属の私にとっては末代までの恥だからな」


「そうなったら、ナタリアかマクシルの旦那に助けてもらうことに期待するさ」


ナタリアの心配にアーサーは軽口で返す。


こうしてアーサーは再び世界を旅する。

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