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勇者の弟子  作者: ヤス
天上の梯子

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28/97

28話、天上の梯子8

熱い戦いで想像以上に長くなりすぎて終わるタイミングを見失ってるので分割で且つ連続でこのまま前半戦として投稿します。

「スレイィィィィィィィィ!」


心臓を貫かれ、静かに倒れ伏した友の亡骸なきがらを前に、アリアは大声で叫んだ。


悪意たっぷりの笑みを浮かべ、友人の血肉を嘗めるヴェルゼビュートに対し、アリアは鬼の形相で襲いかかる。


ヴェルゼビュートへの怒りと憎しみを込めた一撃一撃を、アリアは槍で猛然と叩きつけた。


アリアが更に追撃しようと踏み込もうとした瞬間、ヘプタグラム達は瞬時に陣形を組み、格子状の光線を放ちながらアリアの動きを絡め取った。

その直撃でアリアの動きが止まった直後ーーー

七体のヘプタグラムが一列に並び、全ての光線が一点に収束。次の瞬間、蓄積されたエネルギーは凄まじい轟音と共に解放され、レールガンのごとき速さでアリアを吹き飛ばした。

アリアは塔の回廊の壁に激突し、その衝撃で回廊の石材と土埃が激しく舞い上がった。


「ウッ…….ハ!」


「もう終わりだ小娘よ….」


ヴェルゼビュートがとどめを刺そうと指先を構えたその瞬間、土埃で視界が遮られる中、地面に叩きつけられたはずのアリアの槍が、まるで意思を持ったかのように一突きで眼前に迫る。

ヴェルゼビュートは寸前でヘプタグラムを盾として展開するが、その防御の陰から、すでにアリア本人が亡き友の斧を振りかざして飛び込んできていた。


(こいつ、槍を囮で投げて死角から攻めてきたのか…!)


不意を突かれたことにヴェルゼビュートは焦り、判断が鈍化する。

アリアはそのまま、斧背をヴェルゼビュートに叩きつけた。

アリアの魔力のこもった斧背にヴェルゼビュートは祭壇の壁に激突する。

祭壇の壁が砕け散り、巻き上げられた土埃と破片が視界を覆い尽くす中、アリアはすぐに槍を拾い、その懐へと飛び込んだ。

「逃がすかぁ!」

アリアは槍を構えて突進しようとした瞬間ーーーー


「アリア…..アリアなのか?」


懐かしい、それでいて優しい声。そして、あの頃と変わらない穏やかな表情。アリアの知るフリードの姿だった。


少年期から変わらない優しさに彼女は持っていた槍の手を緩める。


「フリード…..フリードなの?本当にフリードなの?」


「ああ、お前が助けてくれたんだ。ヴェルゼビュートから体を取り戻せたよ」


ほんの少しの奇跡が起きたことにアリアは口角を上げ、全身でフリードを抱きしめる。


「もう二度と離さないよ!」


ーーー大好きだった彼を取り戻せた。


……しかし、


腹部から感じる生暖かい感覚。体内で逆流して口元に溢れる、赤くて苦い鉄の味。腹部から鈍化した痛みが徐々に全身に広がる。


「え……」


男の手刀がアリアの腹部を貫いていたのだ。


「ああ、もう離さないよ」


男の笑みは冷徹で、それでいて悪意たっぷりの(あざけ)りだった。


「言っただろ……。あの(わっぱ)の記憶を読み取ったとな。(わっぱ)の真似など造作もないことだ。あの童(わっぱ)の魂は、既に深く沈めている」


「そ....んな….」


「貴様ら下等な人間どもは脆くていつになっても愉悦だ!」

「ククク...!」と喉を鳴らしたかと思うと、ヴェルゼビュートは塔全体に響き渡るような、冷酷で下卑た高笑いを上げた。


(もう……フリードは……私の知っている人はもういない……)


アリアが一番恐れていた最悪な現実を悟り、必死に支えていた芯が折れる。

アリアは悔しさと絶望で号泣した。


その刹那、紅蓮に燃える斬撃がヴェルゼビュートの顔に直撃する。


ヴェルゼビュートの眼前に現れたのは、鬼の形相で鋭く睨むエドラだった。


「なんだ貴様…..」


凶刃に倒れたスレイの亡骸、そして尊敬する副団長アリアの涙を目にし、エドラは剣を強く握りしめる。


「ヴェルゼビュートぉぉぉぉ!」


怒りのままヴェルゼビュートに突撃するエドラ。


ヴェルゼビュートは指先を動かし、四方からヘプタグラムの光線を一斉に射出する。

エドラは剣に水を纏わせ、発生させた水球の防御壁で光線を相殺し、水蒸気を巻き上げる。 水蒸気の煙幕を突き破り、エドラはヴェルゼビュートの懐に侵入する。 そして、渾身の力を込めた重い一撃を、ヴェルゼビュートの顔面に叩きつけた。


「ヴェルゼビュート、俺はお前を許さねぇ!」


「我の耳元で騒ぐなぁぁコバエがぁぁぁ!!」


ヴェルゼビュートは天に舞っていたヘプタグラムを操り、光線を雨のようにエドラに降らせる。


エドラは回避に専念するが、その隙をつかれヴェルゼビュートに間合いを詰められる。ヴェルゼビュートは付近を舞っていたヘプタグラムを籠手こてのようにまとわせ、エドラに殴りかかった。 エドラは剣に炎の斬撃を纏わせ応戦するが、手数はヴェルゼビュートの方が上回り、天を舞っているヘプタグラムの援護射撃で搦め手にあう。

「ガハッ!」

エドラはヴェルゼビュートのヘプタグラムを纏った拳を脇腹に喰らい、血反吐を吐きながら塔の壁に激突する。


だが、エドラは即座に脚に魔力を込めて驚異的な脚力で跳び、流星のごとく蹴りを食らわせ、ヴェルゼビュートを後ずさりさせた。


「ハァ……なぜ……ハァ……そこまで真剣なんだ?この体、いや、(わっぱ)の為か?それとも、あの(むくろ)の為か?……はたまた、あそこで折れた女の為か?」


「ハァハァ……どんな時でも真面目で、凛としてて、強くて、カッコよくて、怒ると怖くて……でもそんな副団長を尊敬してた。そんな副団長を……アリアさんを……アリアを……泣かせたお前を絶対許さねぇぇ!」


「コバエ如きが我に逆らうなぁ!」


今まで指先でヘプタグラムを操作していたヴェルゼビュートが珍しく腕ごと動かす。周囲を舞っていたヘプタグラムが一か所に集まり、魔力を帯びた巨大な輪を形成する。その輪の中から極太の光線が射出され、エドラに直撃した。


「ぐうっ……!」

光線の威力は凄まじく、エドラは塔の床を砕きながら遠くまで吹き飛ばされ、そのまま膝をついて静かに倒れ込んだ。

「下等な人間が手間取らせやがって」

ようやく邪魔者を排除したことに安堵したヴェルゼビュートは天界を開こうとした。


ドクンーーードクンーーー


倒れた少年の鼓動が徐々に強くなり始めている事を悪魔は知らない。


ーーーー許せない


ーーーー倒さないと


ーーーーぶちのめさないと


ーーーーアイツの中にいる男を救わないと


ーーーーーアイツを生かしてはいけない


少年の中でマグマのような熱くドロドロした憤怒が湧き上がる。


溶岩のような煮えたぎる憤怒に倒れた少年の瞼が静かに開く。その瞳孔は龍のように刺々しく憤怒による禍々しさが籠っていた。

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