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勇者の弟子  作者: ヤス
天上の梯子
23/96

23話、天上の梯子3

前話がダークで陰鬱な作風だったので少しだけ作風を明るめにしてます。

ダークな前話からの明るめは温度感激しく感じると思いますが汗

騎士団の介入によって「ソロモン教団」は壊滅した。私たちは、あの地獄から解放されたのだ。


保護された私やスレイを含めた子供たちは、騎士団の庇護のもと、すぐに病院へと運ばれ治療を受けた。早期に回復した子もいた。だが、ソロモン教団の卑劣な手で家族を失い、帰る場所を無くした身寄りのない子は、教会や孤児院へ。中には特例として、騎士団の従者として身を寄せた者もいる。


スレイは孤児院へ行った。だが、私は、救ってくれたナタリア監督官への恩返し、そしてフリードを救うため、従者として騎士団に身を置くことを選んだ。


私は監督官の傍を離れなかった。ナタリア監督官も、採掘場で負った私の心の傷を深く理解しており、公私ともに優しく接してくれた。


「え、槍術ですか......」


「そうだ。従者といえど騎士団に身を置く以上、それなりの戦闘技能は付けておく必要がある。もちろん、あの惨劇によるトラウマでうまく戦えないならそれでいい。自分の身をしっかり守れる護身術くらいなら、私はいつでも教えられる」


ナタリア監督官(当時)の気遣いと、戦闘指南の言葉が、何より嬉しかった。


「ナタリア監督官、私、強くなりたい!」


「まだ仕事中だ。私語を慎みなさい」


それから五年、フリードを救うため、私は勉学と戦闘技術を徹底的に磨き上げた。


十五歳になった、そんなある日。いつも通り仕事をこなし、ナタリア監督官に書類を届けようと廊下を歩いていた、その時だった。


廊下の曲がり角で、アーサー団長と偶然再会した。


「お、あの時の嬢ちゃんか」


「あなたは......あの時の、採掘場にいらした」


私たちは他愛もない会話を交わしながら、並んで廊下を進んだ。


「ハハハ、まさかあの後騎士団に入るなんてな」


「はい。ナタリア監督官に恩返ししたくて。アーサー団長は、何用でこちらへ?」


「ああ、丁度いい。ナタリアの部屋はどこか分かるか?ちょっと迷ってしまってな」


道に迷っていた団長は、苦笑いしながら私にそう頼み込んだ。


ナタリア監督官の執務室へ、私はアーサー団長を案内した。


「まさか、お前の方からギルド設立を申し出るとはな。隕石でも落ちる前触れか?」


「生憎、元勇者がこの世にいる限り、そんな簡単に隕石なんか降ってこねえよ」


さすが魔王を倒した仲だ。二人のやり取りは、まるで旧友のようだった。ナタリア監督官が冗談を言うのを、私は初めて見た。


「アーサー、結論から言おう。許可はできない」


「ハァ!なんで!」


「なんでだと? ギルドの最低規定人数に達していないからだ! 規定は最低三人。それをお前は、受付嬢と二人だけで立ち上げようとしている!」


「いいだろう! 受付嬢一人立たせりゃ、あとは俺が対応する。何ら問題にならん!」


「問題あり過ぎる! こんなの許可できるか! せめて副団長を見つけてから出直してこい!」


「だったらもう面倒だ。ナタリア、お前が副団長になれ! はい、決定!」


「馬鹿たれ! 私が騎士団とギルドの管理でどれほど忙しいか、そんな簡単に引き受けられるわけがないだろう!」


「頭でっかちのお前なら、騎士団もギルド管理も副団長も、なんら問題なくこなせる。大丈夫だろ!」


「貴様は! いつになったらそのいい加減な性格を治すんだ!」


いがみ合う二人を見て、このままでは埒が明かないと判断した。私は、一気に会話を割って入った。


「あ、あの! 私が、副団長ではだめでしょうか......!」


さっきまで白熱していた空気は、氷点下まで一気に下がり、執務室はしばしの沈黙に包まれた。


「アリア!待て!早まるんじゃない!こんな、いい加減で下賤な男のギルドに、率先して行く必要はないんだぞ!」


すぐに冷静になったナタリア監督官は沈黙を破り、生贄に選ばれた生娘を引き留める母親のように、真剣な眼差しで私を見据え、両肩を強く掴んだ。


「ナタリア監督官......痛いです......」


「テメェ、元勇者をオークかゴブリンみたいに扱いやがって」


「ああ、貴様なんか、勇者のガワを被ったただのゴブリンかオークだからな!」


「なんでいっちょ前に母親面してんだよ、バツイチ監督官」


「アリア、お前が私の代わりになって犠牲になる必要はない。私は大丈夫だ。お前が、あの男によって穢されるのは私には耐えられない!」


「それ、オークに襲われた時に吐くセリフだ!」


アーサー団長のツッコミを他所に、私は肩を掴むナタリア監督官の腕を優しく払った。


「ナタリア監督官、私は大丈夫です。私を救ってくれたナタリアさんやアーサーさんには、心から感謝しています。ナタリアさんと同じくらい、アーサーさんにも恩返しをしたい。だから、私が、副団長になります!」


曇りのない純粋な瞳に、ナタリア監督官は観念したかのように手を放した。


「仕方がない......お前がそこまで言うのなら。......アーサーのギルドの許可を認めよう」


「マジか!」


「ただし、ギルドは管理する私の監視下に置かれる。勝手な真似はするな。あとアリア。書類の名目上は副団長だが、資格はまだだ。早急に取得するように」


「ありがとうございます、ナタリアさん!」


喜び勇んで少女が退出したのを見計らい、ナタリア監督官はアーサーの胸ぐらを掴み、容赦なく机に引き寄せた。


「アーサー。分かっていると思うが、ウチのアリアを泣かせたらどうなるか、分かっているな?」


「母親かよ!オメーは!」


そして私はアーサー団長に恩返しするためにギルドスカイホークに入った。


現在


「お前が幸せそうで、本当に安心したよ」


腕を組み、アリアの回想に聞き入っていたスレイは、彼女が今、幸せに暮らしていることに安堵の笑みを零した。


「まさかアリアさんが、ギルド設立当初からずっといらしたなんて」


ギルド設立の歴史の意外な一面に、サリーは素直に驚きを示す。


「ナタリア監督官の元でお世話になっていたなら、その実力の高さは納得ですね」


アリアの強さの秘訣を知り、スノウは冷静に頷いた。


「ここまで聞かせてもらったら尚更だ! アリアさんやスレイが慕っていたフリードを、絶対に救い出さないといけないな!」


エドラは決意を新たに拳を握り、瞳を輝かせた。


「フリードだけじゃない。あの時の俺たちと同じく、ソロモン教団に捕らわれた町の人々を救い出さなきゃならない」


スレイは力強く頷き、エドラの肩を軽く叩いた。


「俺たちだけで、ソロモン教団――いや、『ヴェルゼビュート』を倒し、フリードと町の人々を救い出すぞ!」


「「「「おう!」」」」

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