表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者の弟子  作者: ヤス
エリー奪還
11/96

11話、エリー奪還2

 エドラ、サリー、スノウの三人は「オルトロス」本部の廊下へ踏み込み、エリーの姿を求めて奥へ駆けていった。


 その背を視界の端で捉えながら、副団長エヴァンは応接間を出て追おうと足を踏み出す。だが――。


 カン、と鋭い音が響く。


 出入口の前に立ちふさがるように、アリアが槍を半身に構えていた。


「勝手に拠点内を駆け回られるのは困りますね、アリア殿」


 焦りを必死に飲み込みながら、エヴァンは笑みを崩さない。アリアはその貼り付けた笑顔を静かに観察し、挑発するように言った。


「……何か、見られては困るものでも隠しているのですか、エヴァン殿?」


 その一言が引き金になった。


 エヴァンの袖口から閃光のように暗器ナイフが飛翔する。しかし、アリアは迷いなく槍の柄で弾き飛ばした。


()()()()()()()()()()()()()()()()()。あなた方には、少々――眠っていてもらわねば」


 次の瞬間、エヴァンはもう片方の袖からダガーを抜き、低く構える。


---


(槍の間合いは保てている……だが油断すれば懐に潜り込まれて終わりだ。小回りの利かなさを突かれる前に――)


 アリアの思考が刃のように研ぎ澄まされ、地を蹴った。


 突き出された槍が直線の閃光となってエヴァンの心臓を射抜く。


 しかし――狙いは空を切る。


 エヴァンの姿は、まるで煙のように掻き消えていた。


「……上か!」


 アリアが即座に天井を見上げると、宙を舞うエヴァンの影を捉えた。


 槍の柄を床に突き刺し、その反動でアリアも高く跳ぶ。


 空中。互いに逃げ場のない一瞬。


 アリアは迷いなく槍を突き出そうとする――が、エヴァンの指先が閃いた。


 二本の暗器がほぼ同時に投擲される。


 アリアは咄嗟に突きを中断し、槍の柄で暗器を薙ぎ払った。


(……読まれたか)


 エヴァンは舌打ちを飲み込みながら着地し、アリアも衝撃を殺しながら床へと着地する。


 静寂が応接間に戻る。だが空気は張りつめたままだ。


---

「あなた、言いましたよね?」


 エヴァンが嘲るように口を開く。


「『人質を救出する行動は抗争とは呼ばない』と。――詭弁ですよ。あなたは我々のやり方が気に入らないだけだ。正義の使者を気取り、御託で正当化している。……吐き気がするほど不愉快だ」


 アリアは真正面からその軽蔑を受け止め、静かに言い返した。


「その通りだ。私はただ正当化していただけだ……だから訂正しよう」


 アリアは槍を構え直し、目だけでエヴァンを射抜いた。


「――シンプルに、お前たちが気に食わない。それだけだ」


 その言葉を聞いたヴァイルは、初めてアリアの“感情”の色を知り、息を飲んだ。


「それで充分ですよ、アリア殿」


 花瓶から一枚、花弁が落ちる。


 次の瞬間、二人の姿が掻き消えた。


---


 応接間に金属音が炸裂する。槍の長い間合いをエヴァンは紙一重で回避しつつ、暗器で中距離を支配する。アリアは槍の射程に引き込む機会を伺うが、あと一歩届かない。


(どうにか……槍の範囲へ、無理やりでも引きずり込む……!)


 アリアが一瞬考えに沈んだ、その僅かな隙をエヴァンは逃さなかった。


(……貰った!)


 影のような動きでアリアの背後に回り込み、暗器を抜き放つ。


 だが――その瞬間。


 アリアの口角が、ほんのわずか動いた。


 すでに読まれていた。


「……なっ――!」


 槍の穂先ではなく、重い柄がエヴァンの喉を強打した。


 予測不能のカウンターに、エヴァンは棚へ吹き飛ばされ、激しく崩れ落ちる。


 影が差す。アリアが立っていた。


「な……ぜ……」


 掠れた声に、アリアは淡々と告げる。


「『なぜ?』という顔をしているな。お前が私の隙を窺っているのは分かっていた。だから――わざと隙を作った」


 淡々と告げると、エヴァンはそのまま意識を失った。


---


 アリアは一度だけ深く息を吐き、戦闘で乱れた空気を整える。


(……あの男の言葉。単にオルトロスのやり方が気に入らない――という話ではない。もっと別の、騎士団どころか……誰の目にも触れさせられない“何か”を隠している……)


 思考がまとまると同時に、アリアは応接間を飛び出した。


「エリー……どこにいる?」


 槍を握り直し、ギルド内を駆け抜ける。


 救うべき彼女を探すために。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ