シエラ初勤務
いつも読んでくれてありがとうございます。
今回の話はシエラが超越対策課に初出勤となるお話です。
果たして異世界から来たシエラは、ちゃんと仕事できるのでしょうか(笑)
温かい心で読んでください。
東京都・霞が関。公安庁ビル地下の会議室には、昼間にもかかわらず重たい沈黙が広がっていた。 国家公安委員会直轄、超越者犯罪対策局(略称:対超課)。その中枢に属する幹部たちが一同に会していた。「……で、その“正体不明の金髪の少女”を、君は本気で使うつもりなのか?」 苦々しい声で問いかけたのは公安局長補佐・村崎。 彼の前で堂々と立つのは、対超課の特務主任・遠藤みゆき。「はい。あの夜、第7ビル事件において、彼女は単独で突入。重武装の異能犯罪グループを、被害ゼロで制圧しました」「映像を見せてみろ」「──はい」 みゆきがタブレットを操作し、壁面のモニターに録画映像が映し出される。 強化ガラスを蹴破って、白いブーツの少女が空から舞い降りる。 そのまま銃弾を全て躱し、次いで──弾丸を空中で止めてしまう。 挙句には紫色の魔力のようなオーラを纏い、周囲の敵だけを吹き飛ばす。「……っ。これは……」「現場にいた人間の証言では、空気中の攻撃を“視認し、警告した”とあります。普通の人間には絶対にできません。──あれは、確実に超越者です。ただ、本人は自分の出自を語りません。“レヴェルティア王国から来た”とは言ってます」「この世界にはない国だな…つまりは違う世界からやってきたと君は言いたいんだな」「私はそう考えてます。」 室内が再び静まり返る。「……危険因子だ。制御不能に陥れば、我々の手には負えん」「だからこそ、“仮採用”で。正式採用ではなく、管理下で試験運用でどうでしょうか?今超越者による事件が多発しており、今の現場では人員不足で、対応が限界に近いと私は考えてます。もし暴走の兆候が見られれば即時拘束で構いません」 しばらくの沈黙ののち、村崎が重々しく頷く。「……仮採用を認める。ただし、担当は遠藤、お前が責任を持て。正式運用は、あくまで実績次第だ。彼女が“人類の味方”であると、証明してみせろ」 その言葉に、みゆきは深く一礼した。「はい。彼女は、きっと──日本を守る力になります」
翌朝、超越者対策課-----
「今日からこの特務係に仮配属された子だ。……シエラ、自己紹介しなさい」とみゆきが言う。 前に出たのは、金髪ポニーテールの少女。黒のショートパンツにオフショルトップ、どう見ても公務員には見えない。「ヤッホー☆ シエラ・ヴァルキュリアですっ!」 ウインクとピースを決めるその姿に、空気が止まった。「えーっとね、あたし、こことはちょっと違う世界?から来たっていうか〜、正直、なにがなんだかサッパリなんだけど〜?でもバイブスは高めでいくんで、そこんとこヨロ〜☆」(……やべぇのが来た) 全員が心の中でそう思った。 みゆきは慣れたように続ける。「彼女はまだ“仮採用”よ。行動や適性次第で正式に配属される。──とはいえ、今日からは仲間。しっかり教えてあげて。常識から」 そのとき、小さな影が前に出てきた。 身長120センチほど、ピンクのツインテール。どう見ても小学生。 だがその“少女”は堂々とシエラを見上げ、両手を腰に当てて言い放った。「……あたし、あなたよりも先輩なんだから!ケーキ買ってきなさい!!モンブランね!!」「みゆき。ねぇ、小学生も仕事できるの?」シエラがみゆきの方を向いて言った。「誰が小学生よ!!」 ツッコミが炸裂した。「これでもあたしは23歳!社会人歴2年目の立派な国家公務員よ!!」「またまた〜、大人ぶっちゃって〜」 にこにこしながら、シエラはそのほっぺたをぷにぷに。「やわ〜、マシュマロ入ってるの〜?」「入ってないし!!触るな変態!!」 みゆきが苦笑しつつ口を挟む。「……シエラ、まず私のことは“課長”と呼びなさい。それと彼女は本当に23歳よ。名前は西園寺りん。配属2年目、実力は確か」「ってなんで“こう見えても”って言い方すんのよ!!」 ぷるぷる怒りながら叫ぶりん。だが、シエラは構わずその頭をぽふぽふ。「わかったわかった〜。よしよし、よくがんばってる〜♪」「バカにするなーーーッ!!」 こうして、異世界から来た最強ギャルと、見た目幼女な23歳の先輩のいびつな関係が始まった。
*** その日の午後。 シエラの“初仕事”は──雑務だった。「これ、全部機密文書だから。シュレッダーで裁断しておいて」と、みゆきに渡された書類の束。「しゅれったー……?」 首を傾げたシエラは、資料室の片隅で一台の機械と対峙する。「……こいつが“しゅれったー“てやつね!」 差し込み口に紙を入れると、機械が唸るように動き始めた。「ガガガガッ……」「わ〜、食べた!?すご〜い、生き物みたい〜!いっぱい食べるんだぞ〜♪」 まるでペットを可愛がるように、シエラはシュレッダーに語りかけ、撫でていた。「えらいぞ〜!いっぱいモグモグして偉いねぇ〜!」 頭を撫でながら紙を次々と投入するその姿に──「なにやってんのよアンタ……」 背後から呆れた声が響く。 りんである。「なんでシュレッダーに愛情注いでんのよ!!」「え?だってこいつ、がんばってるし?」「それは“機械”だから!!感情移入しないで!!」 こうして、異世界テンションの新人と、常識が通じない初仕事の日が始まった。
異世界から来た最強ギャル・シエラが公安の対超課に仮採用され、常識ゼロで騒動を巻き起こす。幼女に見える先輩りんとのドタバタな初仕事が始まる。
最後まで読んでくれてありがとうございます。
次回は、シリアスメインの話になると思います。
9月13日(土)に投稿予定となってますので、次回も楽しみにしてください。