第64話 秘密の幸せ日常
美玲は朝、少しずつお腹の変化を感じながら、ゆっくりと目を覚ました。
「ん……おはよう、颯真」柔らかくささやく声に、颯真は笑顔で振り返る。「おはよう、今日も元気そうだね」
妊娠は順調で、超音波検査の後も医師から安定期に入ったことを伝えられていた。体調に気をつけながら、二人は普段通りの生活を心がける。
朝食は颯真が少しずつ手伝い、パンケーキやオムレツを作ると、美玲はお腹を気遣いながらも笑顔で食べた。
「今日も頑張って作ってくれたんだね」美玲の頬に手を添え、颯真は軽くキスをする。
「君の笑顔が見られるだけで、僕は幸せだ」
午前中は二人で近所のスーパーへ買い物に出かけた。
「この野菜、新鮮そうだね」颯真が手に取ると、美玲はカートに入れながら、「あ、あの食材で煮物作りたいな」と嬉しそうに提案する。
街中では、偶然にも先日のラフォーレ表参道で会ったファンの女性二人とすれ違う。
「美玲さん……ですか?」一人の女性が気づき、思わず手を口に当てる。
「こんにちは。あの、サインお願いしてもいいですか?」
美玲は微笑み、人差し指を口元に当てて静かに頷く。二人はバッグから偶然取り出していたフォトブックにサインをもらい、「ありがとうございます! 宝物にします。芸能活動も応援しています」と長々とコメントする。
昼食後は自宅で、颯真と美玲が交互に料理を作る。
「お昼は簡単にサンドイッチにしようか」
「じゃあ、私が具材を切るね」
手元を寄せ合いながらの作業に、自然と手が触れ、頬に軽く笑顔のキスが交わされる。
「君がいるだけで、家の中が温かくなる」颯真の声に、美玲も小さく微笑む。「私も、颯真と一緒だと安心する」
午後は近くの公園まで散歩に出かけた。
春の柔らかい日差しの中、手を繋ぎ歩く二人。
「お腹も少し重くなってきたね」颯真がそっと美玲のお腹に手を添えると、自然と二人の距離が縮まる。
「大丈夫、颯真と一緒だから」美玲の声に、颯真は優しく頷き、唇を重ねる。長く、穏やかなキス。
お互いの気持ちを確かめ合い、改めてこれからの幸せを共有した。
夕方は自宅で軽く読書をしながら、互いの気持ちを語り合う。
「今日も君と一緒にいられることが幸せだよ」颯真
「私も……このまま普通の生活が続けばいいな」美玲
夜になると、二人は寝室で手を繋ぎ、静かな時間を過ごす。
「おやすみ、愛してる」颯真がそっと唇を重ねる。
「おやすみ、私も……」美玲の吐息が混じり、ふたりは密やかに抱き合いながら眠りにつく。
妊娠の経過を感じながらも、平凡でありながら幸福に満ちた日常。二人だけの秘密の幸せが、静かに紡がれていく。
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