第60話 30歳、退団から始まった新しい人生――「これからは、あなたと共に」
美玲が退団してから数日が過ぎた。
劇場にはまだその余韻が漂っていたが、僕たちの生活はもう完全に二人だけのものになった。
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朝、カーテン越しに差し込む光で目を覚ます。
美玲は穏やかに寝息を立て、浴衣の袖からちらりと見える指先が僕の手に触れる。
そっと手を握り返すと、二人の間に言葉はいらなかった。
その静かな朝の時間が、これからの日常の始まりを象徴しているようだった。
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昼は二人で買い物に出かけたり、表参道ヒルズやラフォーレで過ごした。
美玲の瞳はいつも輝いていて、舞台で見せる華やかさとは違う、自然体の笑顔だった。
「今日はどの服にしようかな」と楽しそうに選ぶ姿は、まるで学生時代の笑顔の延長のようでもあり、
僕は胸の奥がじんわりと温かくなるのを感じた。
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夕方になると、二人で夕飯の支度をしながら会話を楽しむ。
「あーん」と僕がパンを差し出すと、照れながらも笑顔で口を開く美玲。
その仕草一つ一つが、これまで舞台上で輝いていた彼女と、今の彼女を繋ぐ架け橋になった。
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夜、僕たちは手をつなぎながら、退団後の未来を語り合った。
舞台を降りた彼女は、もはや誰かの伝説ではなく、僕の人生の中心にいる妻である。
そして僕は、彼女を一生守ることを改めて誓った。
「これからは、あなたと共に――」
そう呟くと、美玲は僕の胸に額を寄せ、静かに微笑んだ。
その瞳に映るのは、過去10年間の秘密の愛の軌跡と、これから紡ぐ未来の光だった。
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僕たちは誰も知らない愛を、誰にも侵されることなく守り抜いた。
その愛があったからこそ、舞台上での華やかさも、日常の穏やかさも、すべてが輝いたのだ。
夜空に瞬く星を眺めながら、僕はそっと美玲の手を握り返した。
「ありがとう、そしてこれからもよろしく」
美玲も小さく頷き、二人で未来を見つめる。
誰にも知られない愛――それは、僕たちだけの永遠。
伝説のタカラジェンヌも、19歳の少年も、今はただ夫と妻として、静かに手を取り合った。
――そして、新しい人生の幕が静かに上がった。
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