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第57話 主人公の支えと優しさ


 舞台を降りてからの生活は、想像していた以上に穏やかで、想像していた以上に孤独だった。

 毎日、洗濯物を干し、食器を洗い、街へ買い物に出かける。

 どれも普通のこと。けれど、かつて舞台上で何千人もの拍手を浴びていた自分には、どこか現実感が追いつかない。


 そんなある日の夜。

 リビングのソファに座る美玲さんは、手元のマグカップを見つめていた。

「……ねえ、颯真くん」

「どうしました?」

 僕は隣に腰を下ろし、彼女の横顔を覗き込む。


「毎日、幸せだと思うの。あなたとこうして暮らせて……。

 でもね、ふと、何もしていない時間に思うの。私、本当に役に立ってるのかなって」

 声は小さく震えていた。



 僕は少し考えてから、彼女の手を取った。

「役に立つとか、そういうことじゃないんです。

 僕は……美玲さんが隣にいてくれるだけで幸せです」


 彼女の瞳が驚きで揺れる。

 それでもまだ不安げな色が残っていたので、僕は続けた。


「舞台で輝いていた美玲さんも、エプロンをつけて夕飯を作ってくれる美玲さんも。

 どっちも、僕にとってはかけがえのない“美玲さん”なんです。

 それに……もし不安なら、僕が全部受け止めます。だから安心してください」



 美玲さんは唇を噛みしめ、そして涙をこぼした。

「……颯真くん、本当に……そんな風に思ってくれてるの?」

「はい。何度でも言います。僕は、美玲さんが必要なんです」


 その瞬間、彼女は堰を切ったように僕の胸に飛び込んできた。

 細い腕が背中に回り、強く抱きしめられる。



 夜が更けて、ふたりは一緒に浴室へ向かった。

 湯気に包まれた静かな空間で、互いに肩を寄せ合いながら湯に浸かる。

 視線が合い、どちらからともなく近づいた。お互いに目を閉じ、そっと唇を重ねる。

 長いキス。水の音が響く中で、ただ心臓の鼓動だけが熱く伝わってくる。


 美玲の心の中には、静かに言葉が浮かんでいた。

「私はもう舞台の人ではなく、颯真くんの妻として生きていく。まだ戸惑いもあるけど……この人となら大丈夫。どんな未来も乗り越えられる」


 僕の胸にもまた確かな思いがあった。

「彼女を守りたい。支えたい。彼女が笑顔でいられるように、僕は何度でも立ち上がる。美玲さんは僕の誇りで、僕の生きる理由だ」



 湯から上がり、浴衣姿の美玲はほんのり頬を赤く染めていた。

 その姿にまた心を奪われながら、ふたりは寝室へ向かう。

 布団に入り、自然と手が重なる。


「……おやすみ、颯真くん」

「おやすみなさい、美玲さん」


 そう言って、最後にもう一度、柔らかなキスを交わした。

 夜の静けさに包まれながら、ふたりの呼吸はゆっくりと重なっていき、確かな安心の中で眠りについた。



最後まで読んでくださり、ありがとうございます!

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読者の皆さまの応援が、物語の未来を動かします。


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皆さまの応援がある限り、次の物語はまだまだ紡がれていきます。

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