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第46話 26歳の誕生日、プロポーズの後の食卓


 六月。

 社会人として忙しい日々を過ごす中で迎えた彼女の誕生日。

 僕(篠原颯真)は、胸に緊張を抱えたまま、実家で彼女を待っていた。


 居間のテーブルには、母・由美子と姉・麻衣が用意してくれた料理がずらりと並ぶ。

 グラタンに唐揚げ、煮物、サラダ。中央には「Happy Birthday 美玲」と書かれたチョコプレート付きのケーキが飾られ、食卓は小さな祝宴のように華やかだった。



「颯真……こんなに用意してくれたの?」

「はい。今日は美玲さんのための日ですから」


 家族の拍手に迎えられ、彼女(朝倉美玲)は少し照れながら席に着いた。

 ロウソクを吹き消すと、自然と拍手と笑い声が弾け、居間は温かな空気に包まれた。


 料理を囲み、会話が弾む中で、僕はずっとポケットに忍ばせた小さな箱の存在を意識していた。

 ――今しかない。



 食事が一段落した頃、僕は深呼吸をして箱を取り出した。

 開けると、中にはシンプルなプラチナのリングが光を放っていた。


「……これを渡したくて」


 美玲さんの瞳が揺れる。

「指輪……? どうして……」


「大学時代のアルバイトで貯めたお金の一部です。大きなものではありません。でも――気持ちは本物です」


 そう言って、彼女の左手を取り、そっと指輪をはめた。

 淡い光を受けて輝くリングに、彼女の瞳から涙が零れた。


「颯真……」


 僕は声を震わせて告げた。

「――僕と結婚してください」


 一瞬の沈黙。

 そして、美玲さんは涙を浮かべながら微笑んだ。


「……はい。颯真となら、未来を選べる」


 抱き寄せると、彼女は小さく「んっ……」と吐息を漏らし、長くて甘めの口付けを交わした。



 その時だった。

「……おいおい、俺たちを忘れてないか?」


 背後から兄・拓真の声が響き、僕らは慌てて飛び上がった。

 振り返ると、父・圭一が腕を組み、母・由美子と麻衣が台所から顔を出していた。


「なっ……どうして!?」

 僕が動揺すると、麻衣が笑いを堪えきれずに言った。

「颯真、最初からバレバレよ。箱を隠してるの、見えてたから」


 父・圭一は重々しい声で言った。

「まあ……ここまで本気なら反対する理由はない。ただし――結婚生活は甘くないぞ」


 拓真も真剣な顔で続けた。

「弟を頼む。泣かせるなよ」


 由美子は涙を浮かべて微笑んだ。

「颯真……おめでとう。美玲さん、ようこそ私たちの家族へ」



 その後、由美子の一言で改めて皆がテーブルに集まり、五人で食事を囲んだ。

 料理を分け合い、ケーキを切り分けながら笑い声が絶えない。


「なんだか結婚披露宴みたいだな」

 拓真の冗談に、麻衣も笑って頷く。

「ほんとよ。ケーキまであるし」


 美玲さんは頬を赤らめて俯いたが、その表情には確かな幸福が宿っていた。


 父・圭一は真剣に言った。

「芸能界も社会も厳しい世界だ。だが本気なら応援する」

 拓真は「困ったことがあれば遠慮なく言え。弟のことでも、仕事のことでも」と心強く続ける。


 麻衣は「女同士のことなら私に相談してね」と笑顔を見せ、由美子は手を握りしめて「美玲さん、もう家族同然よ」と優しく言った。



 温かな言葉と笑いに包まれ、僕は胸がいっぱいになった。

 ――彼女を愛する気持ちと、彼女を受け入れてくれる家族。

 その両方に囲まれている今、この上ない幸せを噛みしめていた。


 夜が更け、ケーキの最後の一切れまで分け合ったあと、再び「おめでとう」の拍手が響いた。

 美玲さんの頬は、涙と笑顔で輝いていた。


 こうして、僕らの未来は――家族に見守られながら動き出したのだった。



最後まで読んでくださり、ありがとうございます!

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