第42話 頂点の舞台
四月下旬。
新生活に慣れ始めた頃、劇団から大々的に告知された公演が幕を開けた。
――花組トップ娘役、朝倉美玲のお披露目公演。
その日、僕――篠原颯真は、社会人としての仕事を終えたあと、スーツ姿のまま劇場へ向かった。
劇場前には長蛇の列ができ、ロビーは祝福ムードに包まれていた。
ロビーの中央には美玲さんのポスターが掲げられ、ファンたちが写真を撮りながら「絶対泣いちゃう」「トップ就任おめでとう」と口々に話していた。
胸が高鳴る。
彼女の晴れ舞台を、いち観客として見届けることができる――それだけで胸がいっぱいだった。
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開演ベルが鳴り、会場が静まり返る。
幕が上がると、豪華な舞台装置と鮮やかな衣装を身にまとった花組生たちが登場した。
その中央に立つのは、美玲さん。
スポットライトに照らされたその姿は、息を呑むほど眩しかった。
白いドレスが光を反射し、まるで舞台そのものが彼女のために存在しているかのように見えた。
観客のざわめきが一瞬で歓声へと変わる。
「美玲――!」
「トップ就任おめでとう!」
拍手と声援の嵐。
けれど彼女はその全てを堂々と受け止め、澄み渡る声で歌い出した。
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彼女の歌声は、これまでよりも一層深みを増していた。
病を乗り越え、責任を背負い、トップとしての覚悟を胸に秘めているからこそ生まれる強さ。
伸びやかで透明感のある高音は劇場全体を震わせ、観客の心を一つにした。
芝居の中で、相手役となる男役トップと目を合わせる姿は、まさに物語のヒロインそのもの。
愛と苦悩を演じる彼女に、会場はすすり泣きと拍手で応えた。
――ああ、本当に頂点に立ったんだ。
僕は胸がいっぱいになり、視界が滲んだ。
彼女がここまで歩んできた道のりを知っているからこそ、今目の前で輝く姿に心を打たれた。
⸻
やがてクライマックス。
華やかなフィナーレで花組全員が舞台に揃い、トップコンビが階段を降りてくる。
観客の拍手は嵐のように鳴り止まない。
最後に彼女が深々と頭を下げた瞬間、僕は心の中で強く呟いた。
――美玲さん、誇らしいです。誰よりも、あなたを愛しています。
⸻
終演後、劇場を出ると、夜風が頬を撫でた。
劇場前ではファンたちが笑顔で語り合い、祝福の花束を抱えていた。
その光景を眺めながら、僕は心の奥で決意を固めた。
――彼女はこれからも高みへ登り続ける。
だから僕も負けてはいけない。社会人として一人前になり、彼女の隣に立てる男にならなければ。
彼女が舞台で頂点に立ったその日、僕もまた新たな決意を胸に刻んだのだった。
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