第4話 秘密のやり取り
それから数日間、僕の生活は少しずつ変わっていった。
授業の合間や夜眠る前、ほんの短い時間にスマホを開いては彼女にメッセージを送る。
返事はいつも遅れてやってくるけれど、その一文が届くだけで一日が輝いて見えた。
――今日も稽古でした。汗だくだけど、充実感でいっぱい。
――レポート頑張ってね。ちゃんと寝てる?
文字だけなのに、彼女の声や表情が浮かんでくる。
周囲に知られてはいけない秘密のやり取り。誰にも見せられないはずなのに、僕にとっては世界で一番尊い時間だった。
ある夜、ふいに彼女からこんなメッセージが届いた。
――ねえ、今度時間があったら、一緒に出かけませんか?
思わず息を止めた。
彼女の方から誘ってくれるなんて、夢にも思わなかった。
僕はベッドから跳ね起き、必死に指を動かす。
――もちろん!いつでも大丈夫です。
数分後、返事が来た。
――じゃあ……来週の水曜日。公演の合間に、少しだけ。
その瞬間、心臓が爆発しそうになった。
画面の光を見つめながら、何度も何度も「水曜日」という文字を確かめる。
初めてのデート。
誰にも言えない秘密の約束。
その日から僕は講義に身が入らず、アルバイト中も時計ばかり気にしていた。
頭の中は、彼女とどんな会話をすればいいのか、どんな服を着ていけばいいのか――そんなことでいっぱいだった。
姉には何も言わなかった。
彼女が僕に番号を教えてくれたことも、メッセージをしていることも、そして来週会う約束をしたことも。
胸の奥にしまい込んでおく秘密。
けれどその秘密が、僕を生き生きとさせていた。
――観覧車、乗ってみたい。夜景、きっと綺麗よね。
最後に届いたその一文で、僕の胸はまた熱くなる。
彼女と同じゴンドラに座って、夜の街を見下ろす自分を想像するだけで、眠れない夜が続いた。
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