第3話 初めてのメッセージ
その夜、帰りの電車の中で、僕の手のひらにはずっと彼女の書いた番号が残っていた。
カードに記された文字は、ただの数字なのに、僕にとっては宝物のように思えた。
――これが繋がりの証なんだ。
家に帰り、シャワーを浴びても、布団に横になっても、心臓の高鳴りは収まらなかった。
時計の針は夜の十一時を過ぎている。
「今送っていいのか」「迷惑じゃないか」――そんな考えが頭の中をぐるぐると回る。
けれど、もし今日送らなければ、勇気を出せなかったことを一生後悔する気がした。
僕はスマホを手に取り、震える指で文字を打ち込む。
――今日は本当にありがとうございました。舞台、とても素敵でした。
文章を見返す。
シンプルすぎるか?
もっと感動を伝えるべきか?
削除と入力を繰り返すうちに、十五分が過ぎていた。
そしてついに、送信ボタンを押した。
既読がつくまでの数秒が、永遠のように感じられた。
胸の奥で何かが爆発しそうになったその瞬間――画面に新しい通知が灯る。
――こちらこそ。来てくれてありがとう。感想を直接聞けて嬉しかった。
息を呑んだ。
短い文なのに、彼女の声がすぐ隣で聞こえたような気がした。
続けて彼女からもう一通。
――でも、これからやり取りするのは、ほんの少しだけにしようね。劇団には秘密だから。
その言葉に現実を思い知らされる。
彼女は今、華やかな舞台に立つ存在。
僕はただの大学一年生。
決して誰にも知られてはならない関係――そんな境界線が、初めから引かれている。
それでも僕は返信を打ち込んだ。
――わかりました。秘密にします。僕だけの宝物にします。
送信してから、自分の言葉が少し大胆すぎたかと不安になった。
だが数分後、返事が届く。
――ふふ、じゃあ安心ね。あなた、ちょっと可愛いところあるのね。
その一文に、心臓が跳ねる。
スマホを胸に抱きしめたまま、僕はその夜、眠りについた。
彼女の笑顔が夢の中でも浮かんでいて、目が覚めても消えなかった。
――そして僕は、知らぬ間に、彼女という光の中へ踏み込んでいたのだ。
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