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第28話 学園祭のざわめき


 十一月の終わり、大学のキャンパスは学園祭で活気にあふれていた。

 普段は静かな講義棟も、この日ばかりは色とりどりの装飾や看板で賑わい、屋台からは甘い香りや揚げ物の匂いが漂ってくる。

 至るところで笑い声と音楽が混ざり合い、祭りのざわめきに包まれていた。



 正門前には模擬店の列が伸び、焼きそばやクレープ、たこ焼きの屋台が呼び込みをしている。

「いらっしゃい! 焼きそば大盛りどうですか!」

「新作クレープ、期間限定ですよ!」


 僕は友人の佐伯悠真や西条蓮司に引っ張られるように、行列の中に並んだ。

「おい、このクレープ絶対インスタ映えするやつだぞ」

「女子連れてくるなら最高だな。なあ、拓真……じゃなかった、拓真は兄貴か。お前もさ、彼女いたりすんの?」

 西条が茶化すように僕を見て、僕は曖昧に笑ってごまかした。


 その横で真面目な高村直樹が溜息をつく。

「お前ら、食べることしか考えてないのかよ……」

「いいだろ別に! 祭りなんだから」

 悠真が笑い飛ばし、また場を盛り上げた。



 今年は僕のゼミも展示を出していて、会場の教室には多くの学生や地域の人が訪れていた。

 そこで新しく知り合ったメンバーたちがいた。

藤原遼ふじわら・りょう:穏やかな文学部の三年生。展示発表の中心的存在。

森川慧もりかわ・けい:理工学部の二年生。冷静沈着でデータ担当。

石田陽介いしだ・ようすけ:スポーツ推薦の経済学部一年。ノリがよく体力自慢。

小野寺涼おのでら・りょう:芸術学部二年。写真撮影が得意で展示のポスターを担当。

相原美咲あいはら・みさき:教育学部の二年生。快活で面倒見がよく、みんなのまとめ役。

杉浦紗奈すぎうら・さな:同じ教育学部一年。やや控えめだが笑顔が可愛らしい。


 展示の教室では、来場者が熱心に質問してきて、それに藤原や森川が丁寧に答えていた。

「へえ、データの推移がこうなるんですね」

「はい、こちらをご覧ください。……」


 石田は子どもたちと一緒に遊びながら笑顔を見せ、相原と杉浦は来場者の誘導や受付で大忙し。

 僕もその一員として、説明や会場案内に奔走した。



 昼過ぎ、少し落ち着いた時間に友人たちと模擬店を回った。

「俺は唐揚げ買う!」

「いや、チョコバナナも外せないだろ!」

「なんで甘いのとしょっぱいの両方買うんだよ!」


 そんな掛け合いに笑いながら、僕は心の奥で別のことを考えていた。

 ――美玲さんは今、稽古中だろうか。

 この祭りのざわめきを聞かせてあげたい。

 でも、彼女は今、ファンの前で夢を演じている。


 友人や新しい仲間たちの笑顔に囲まれていても、心の奥には彼女の影があった。

 誰にも言えない秘密が、僕をどこか遠ざけていた。



 夕暮れ。

 オレンジ色の光が校舎を染める中、僕はふとスマホを手に取った。

 画面を見ても、彼女からのメッセージは届いていない。

 分かっている――彼女は舞台に追われているのだ。

 それでも、小さな期待を抱いてしまう自分がいた。


 学園祭のざわめきと笑い声の中で、僕の胸には静かな孤独が広がっていった。



最後まで読んでくださり、ありがとうございます!

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