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第27話 二人きりの温もり


 夜の公園はしんと静まり返っていた。

 冷たい風が木々を揺らし、街灯の下で落ち葉がひらひらと舞い落ちる。

 その中で僕と美玲さんは、ベンチに並んで座っていた。


 最初は言葉がなかった。

 ただ互いの手を繋ぎ、指先の温もりを確かめ合っていた。

 その沈黙すら心地よく、離れていた時間が少しずつ埋められていく気がした。


「……ごめんね」

 彼女がふいに小さな声で呟いた。

「舞台に追われてばかりで、全然あなたに時間をあげられなくて。本当はもっと会いたいのに……」


 その声は震えていて、彼女の瞳にはうっすらと涙が光っていた。

 強くあろうとする人だからこそ、こうして弱さを見せてくれるのが胸に響いた。


「謝らないでください。僕は待てます。……だって、美玲さんが頑張ってること、ちゃんと知ってるから」


 そう言って彼女の手を握り直すと、彼女は耐え切れなくなったように僕の肩に顔を埋めた。

 細い肩が震えている。

 僕は迷わず両腕で彼女を抱きしめ、背中を撫でた。


「……泣いていいんです。僕の前では」


 しばらくの間、彼女は何も言わずに僕の胸に身を預けていた。

 やがて涙が落ち着くと、深い吐息とともに顔を上げる。

 赤くなった瞳で僕を見つめ、少し照れくさそうに笑った。


「……こんなの、誰にも見せられない」

「僕だけが見られるんです。だから嬉しい」


 そう言うと、彼女の瞳がまた潤み、次の瞬間、彼女はそっと唇を重ねてきた。

 最初は短く、触れるだけのキス。

 でもすぐに吐息が混じり合い、長く甘い口付けに変わっていった。


「……んっ……」

 夜風に溶ける彼女の吐息。

 僕は強く抱き寄せ、彼女の細い体を守るように包み込んだ。


 唇を離したあと、彼女は頬を染めながら微笑んだ。

「……ありがとう。やっぱり、あなたがいるから頑張れる」


 その言葉に胸が熱くなる。

 ――舞台と僕。

 両方を大事にすると誓った彼女の想いが、今は確かに届いていた。


 冷たい夜風の中、互いの温もりだけがそこにあった。

 涙と笑顔が交錯しながらも、僕らの絆はさらに深く結ばれていった。



 やがて、時計の針が夜の遅さを告げる頃。

 彼女は名残惜しそうに手を離し、マフラーを整えた。

「……そろそろ戻らないと。明日も朝から稽古なの」


 僕は頷きながらも、その手をもう一度強く握った。

「気をつけて。……また会える日まで」

「うん。……すぐにね」


 街灯に照らされる中で、最後にもう一度だけ短い口付けを交わす。

 そして彼女は背を向け、小走りで暗がりに消えていった。


 その背中が見えなくなっても、僕の胸には彼女の温もりと涙、そして笑顔が確かに残っていた。



最後まで読んでくださり、ありがとうございます!

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