表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/65

第17話 あなたがいるから


 あれから数週間。

 季節は初夏に差しかかり、大学のキャンパスには眩しい日差しと湿った風が吹き抜けていた。

 僕は日常をこなしながらも、心のどこかで美玲さんのことばかりを考えていた。

 メッセージは毎日のようにやりとりしていたけれど、ここ最近の彼女はどこか元気がない。

 文面の端々に、疲労や迷いがにじみ出ていた。


 ――「今日は稽古でミスしちゃった。集中できてなかったのかな」

 ――「私、トップとしての器があるのかなって不安になる」


 舞台上では誰よりも輝いているのに、その裏でこんな思いを抱えていることを知り、胸が痛んだ。

 どうしても顔を見て話したい。そう思った僕は、夜に時間を作ってもらい、公園で会う約束をした。



 夜。

 街灯に照らされた公園のベンチに、美玲さんは座っていた。

 肩まで伸びた髪が少し乱れ、視線は地面に落ちている。

 普段は凛とした彼女が、こんな風に小さく見えるのは珍しかった。


「……大丈夫ですか?」

 隣に腰を下ろして声をかけると、彼女はゆっくりと顔を上げた。

 けれど瞳の奥には疲れが滲んでいる。


「……今日も稽古で怒られちゃった。舞台に立てば笑顔でいなきゃいけないのに、裏では失敗ばかり。……私、本当にトップをやれるのかな」

 吐き出すような声。

 その言葉に、胸が締めつけられた。


 僕は迷わず彼女の手を取った。

 細くて冷たい手を両手で包み込み、真っ直ぐに見つめる。

「……大丈夫です。美玲さんならできます。だって、僕は知ってます。舞台であんなに輝いているのを。……そして、舞台を降りたときの、誰よりも優しい笑顔を」


 彼女は目を伏せ、かすかに唇を震わせた。

「……でも、私、怖いの。ファンのみんなを失望させるんじゃないかって」


 僕は首を振った。

「失望なんてしません。もし世界中の誰かが背を向けても、僕は絶対にあなたを見ています。……美玲さんは、僕にとって唯一の人だから」


 静かな夜気の中で、言葉が真っ直ぐに届くのを感じた。

 彼女はしばらく黙っていたが、やがて涙をこらえるように笑った。

「……あなた、ずるいくらい真剣ね」


 そして、彼女は小さく呟いた。

「あなたがいるから……頑張れる」


 その一言に、胸が熱くなった。

 僕はたまらず彼女を強く抱きしめる。

 細い肩が腕の中に収まり、彼女の心臓の鼓動が僕の胸に伝わってくる。


「……離れないでね」

 彼女が小さな声で囁く。

「離れません。絶対に」


 互いの温もりを確かめ合いながら、夜の公園でしばらく抱き合っていた。

 それは言葉以上に深い誓いとなり、ふたりの絆をまたひとつ強く結んでくれた。



最後まで読んでくださり、ありがとうございます!

もしこの物語に少しでも「面白い!」と感じていただけたなら——


ブックマーク & 評価★5 をぜひお願いします!


その一つひとつが、次の章を書き進める力になります。

読者の皆さまの応援が、物語の未来を動かします。


「続きが気になる!」と思った方は、ぜひ、見逃さないようブックマークを!

皆さまの応援がある限り、次の物語はまだまだ紡がれていきます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ