第15話 姉の後押し
その週末、家族揃っての夕食が終わったあと、姉の麻衣に「ちょっと話がある」と呼び止められた。
リビングの隅、照明を落としたソファに並んで腰を下ろす。
彼女は湯飲みを手に取り、ゆっくりと僕を見つめた。
「……あんた、本当に美玲と付き合ってるんだよね」
「……うん」
隠しても仕方ない。僕は正直に答えた。
麻衣は大きく息を吐き、やがて苦笑した。
「やっぱり。最近のあんた、見ればわかるもん。授業帰りもスマホばっか見てニヤニヤして、夜も外に出かけて……バレバレだよ」
「……そんなにわかりやすい?」
「うん。弟のことは一番わかってるから」
その声には呆れと同時に温かさが滲んでいた。
「でもね、弟。私は美玲のこともよく知ってる。高校の頃からの友達だから。……あの子は真面目で努力家で、舞台に命を懸けてる。だからこそ、心配なの」
「心配……?」
「そう。あの子の未来を邪魔するんじゃないかって。ファンの夢を壊すんじゃないかって。……でも」
麻衣は視線を僕に戻し、にやりと笑った。
「もし美玲が自分から“あなたと付き合う”って決めたなら、私は応援するよ」
胸が熱くなるのを感じた。
姉がそう言ってくれることが、何よりの支えだった。
「……ありがとう。僕、本気だから」
「わかってる。あんたの目を見ればね。……だから、ハメを外さないように。あの子を泣かせるようなこと、絶対にしないで」
「うん。絶対に」
約束の言葉を交わした瞬間、麻衣はふっと柔らかな笑みを見せた。
「よし、それならいい。……私の弟にしては、なかなかやるじゃん」
⸻
その夜、僕は美玲さんに会った。
裏道を歩きながら、自然に手が触れ合い、指先が絡む。
彼女は僕を見上げ、少し照れたように微笑んだ。
「……今日は何かいいことがあった顔してる」
「姉に、応援するって言われました」
「ほんと?」
驚いた彼女の瞳が、街灯に照らされてきらめいた。
次の瞬間、僕は彼女をそっと抱き寄せた。
「だから、大丈夫です。僕は絶対にあなたを守ります」
彼女は小さく吐息を漏らし、そして静かに唇を重ねてきた。
その口付けは甘くて長く、僕の胸に姉の言葉と彼女の温もりを同時に刻み込んだ。
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