表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/65

第13話 客席からの視線


 劇場の照明が落ち、幕が開いた瞬間、客席全体に大きなざわめきが広がった。

 華やかな音楽とともに登場したのは、花組の娘役――朝倉美玲。

 きらびやかな衣装をまとい、堂々と舞台の中央に立つ彼女の姿に、客席は一斉に拍手を送った。


 僕はその拍手の中に混じりながらも、胸の奥に複雑な感情を抱いていた。

 舞台上で輝く彼女は、誰よりも美しく、誰よりも遠い存在に見える。

 隣に座る姉の麻衣は、目を潤ませながら舞台を見つめていた。


「やっぱり……すごいね」

 姉が小声で言う。

「……うん」

 僕は短く答えるのが精一杯だった。


 観客の視線はすべて彼女に注がれ、喝采が鳴り止まない。

 僕の隣にいることを知っている人は誰もいない。

 けれど、心の中で「彼女は僕の恋人なんだ」と叫びたくなる衝動を必死で抑えた。



 公演が終わり、観客が一斉に立ち上がって拍手を送る。

 その光景を目にしながら、僕は改めて思い知らされていた。

 ――彼女は多くの人にとって“憧れの象徴”なのだ、と。


 カーテンコールを終え、幕が下りる。

 劇場を出ると、姉が深いため息をついた。

「……やっぱり、美玲はすごいわ」


 そのあと、姉に連れられて楽屋口に向かう。

 控えめに訪ねると、ほどなくして彼女が姿を見せた。舞台化粧を落とし、私服に着替えた姿は、舞台上とは違って柔らかい。


「来てくれてありがとう。どうだった?」

 美玲さんが微笑んで言う。


「最高でした。本当に……綺麗でした」

 僕は言葉を選びながら伝える。

 その隣で姉も笑った。

「ええ、感動したわ。……でも」


 姉は一瞬、真剣な目で僕を見た。

「――弟。ハメを外さないようにね」


 その言葉に、僕は息を呑んだ。

 美玲さんは驚いたように姉を見たが、すぐに意味を悟ったらしく、頬を少し赤らめた。


「……麻衣、そういう言い方……」

「ごめん。でも、二人のことは応援してるから。だからこそ、慎重にね」


 姉の言葉には、優しさと心配の両方が込められていた。

 僕は真っ直ぐに頷き、誓うように言った。

「わかってる。大事にするから」


 その瞬間、美玲さんの瞳が揺れ、僕にだけ向けて小さく微笑んだ。

 舞台上では決して見せない、恋する女性の表情だった。



最後まで読んでくださり、ありがとうございます!

もしこの物語に少しでも「面白い!」と感じていただけたなら——


ブックマーク & 評価★5 をぜひお願いします!


その一つひとつが、次の章を書き進める力になります。

読者の皆さまの応援が、物語の未来を動かします。


「続きが気になる!」と思った方は、ぜひ、見逃さないようブックマークを!

皆さまの応援がある限り、次の物語はまだまだ紡がれていきます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ